バレンタイン目前!今年はどうする?チョコレート

2021/02/11 06:29 更新


さまざまな産地のカカオ豆が入った麻袋が並ぶ

 今年ももうすぐバレンタインデー。チョコレートの季節が近づいてきた。コロナ禍で外出自粛をしなければならない状況だが、自分のために選ぶのも誰かのために選ぶのも楽しい、年に一度のイベントだ。今回はチョコレートの新たな楽しみ方として注目されている「ビーントゥバー」チョコレート専門店と、様々なチョコレートが集まる百貨店に、こだわりや注目商品について聞いた。

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ビーントゥバーチョコレート専門店「ダンデライオン・チョコレート」

 ここ数年で耳にすることが多くなったビーントゥバーのチョコレート。サンフランシスコ発祥のビーントゥバーチョコレート専門店「ダンデライオン・チョコレート」にチョコレートの作り方や、どんなこだわりがあるのかを聞いた。

◇カカオ豆の味引き出す

 ビーントゥバーはカカオ豆からチョコレートバーまでの一つの製造過程のことだ。ダンデライオン・チョコレートはカカオ豆をダイレクトトレードし、全ての工程を自社で行っている。2010年に米サンフランシスコでスタートしたブランドで14年に日本に進出。東京・蔵前に店を構え、2月で5周年を迎えた。

 こだわりはカカオ豆ときび砂糖の二つの原材料だけでチョコレートバーを作ること。ミルクチョコレートやトッピングチョコレートは作らず、シンプルなものにこだわっている。カカオ豆の産地の違いによって異なる、特徴のある味わいのチョコレートが店に並んでいる。

 チョコレートバーは7種類あり、カカオ豆の含有率70%のものが六つと85%が一つだ。カカオ豆は主に中南米産が多いが、アジア産も使っている。

 中南米はカカオ豆の原産国で、カカオの研究機関があり、苗木の研究などカカオ農園の発展に尽くしている場所でもある。クラフトチョコレートの活性化のために、ダンデライオン・チョコレートもカカオ農園の立ち上げに携わることもあるという。

◇滑らかになるまで3日

 チョコレート作りは、まず豆の選別から始まる。収穫後、発酵させ乾燥した豆をふるいにかけて、ゴミやちりを除いていく。機械化できないため手作業で、多いときには1日に100キログラム以上の豆を選別することもある。

手作業で割れたり欠けたりしている豆がないか一つひとつ選別していく

 次にローストだ。ダンデライオン・チョコレートでは、コーヒー豆用のロースターを火力や回転などカカオ豆が傷つきにくいように仕様を変えて使っている。フルーティーなタイプのカカオ豆は、酸味が飛ばないように110度と低い温度、短い時間でローストするなど、豆により異なる。ローストの条件が違うため、サンフランシスコで売っているチョコレートバーと日本で売っているチョコレートバーは、味が違うという。

ロースト後、細かく砕いて取り出したカカオニブ

 ローストが終わった豆を細かく砕き、外側の皮とカカオニブに分離する。そしてメランジャーと呼ばれるドラムシリンダーで、カカオニブときび砂糖を合わせて挽(ひ)いていく。カカオに含まれる脂肪分が染み出すことで滑らかになるため、約3日間かけてじっくりと均一に混ぜる。

機械でカカオニブときび砂糖を混ぜ合わせ、1日経った状態

 一度ブロック状にしてチョコレートを寝かせてから、テンパリングしていく。カカオの産地によって温度を変えていて、この工程を経て風味をチョコレートバーに閉じ込め、つややかな光沢が生まれる。テンパリング後、成形し最後にラッピングするとチョコレートバーの完成だ。

テンパリングをすることで手で持っても溶けにくい感触になる
一つひとつ手作業でラッピングをして仕上げている

 チョコレートバーの包みには、豆ごとにローストなどの担当者の名前が入っている。味の決め手になるローストの温度やきび砂糖を入れるタイミングをこだわって決めている。ベトナム産のカカオ豆を担当した武内優季さんは「焙煎(ばいせん)前の豆の、おいしそうなフルーティーな香りとスパイシーな香りが特徴的だった。そのとき感じた酸味とスパイス感が残るようにした」と話す。

完成したチョコレートバーが並ぶ店内

 5周年を記念し、ボンボンショコラの予約販売とカカオ含有率100%のチョコレートバーを限定販売している。「バレンタインをきっかけに、季節問わずにチョコレートを楽しんでほしい」という。

包装紙にはカカオ豆ごとにローストの仕方などを決めた担当者の名前

「ダンデライオン・チョコレート」伴野マネージャーに聞きました

〝シンプルさが魅力〟

担当したホンジュラスのカカオ豆を使ったチョコレートバーを手に

 チョコレート・エクスペリエンスマネージャーの伴野智映子さんにビーントゥバーのチョコレートの魅力を聞いた。

 究極にシンプルなことが魅力の一つ。原材料もわかりやすく、食べて安心。シンプルだからこそ、カカオの産地で味の違いが出ることが面白く、発見もあって楽しい。産地ごとにカカオの含有率が同じチョコレートの食べ比べもできます。

 ブランドがスタートしたころは、あまり浸透していなくて「価格が高い」「チョコレートなのに味が苦い」と言われることもありました。5年間やってきた中で状況も変化して、カカオ豆の含有率が70%のものでも苦いという声が減りました。カカオ豆からチョコレートを作っていることが広まって、1枚1200円でも高いと言われることも減ってきました。子供から年配の人まで多くの人に、ワークショップやお店で五感でチョコレートを体感してもらって、面白さを知って興味を持ってもらえたらと思っています。

 「板チョコってどんなときに食べたらいいの?」と聞かれることもあります。おすすめはデスクワークのときや、朝一番にリフレッシュで食べることです。もちろん、いつ食べてもおいしいです。服のようにチョコレートも気分によって、ビーントゥバーのチョコレートや市販のチョコレートを使い分けつつ取り入れてもらえたらうれしいです。


今年の百貨店バレンタインフェア

家族で楽しめるDIYや健康志向

 毎年話題の百貨店のバレンタインフェア。今年は家族と家で楽しめるDIYや、健康志向、サステイナブル(持続可能な)などの要素を取り入れたチョコレートが増えている。コロナ感染拡大を受けて、家族や身近な人とバレンタインを楽しむ人が増えると予想しての提案だ。

 高島屋は、パッケージに切手を貼ってそのままポストに投函できる「ポストボックス・クッキーズ」のミルクサンドクッキー(601円)や、家で作って楽しめるDIYチョコレート「TOMIZ×ショコラティエ・パレ・ド・オール」の家で作るガトーショコラセット(3996円)など今年ならではの商品を推している。また、高島屋新宿店限定で並ばずにすぐ買える「チョコレート自動販売機」を設置。「カカオサンパカ」のチョコレート6種類を自動販売機で買うことができる。サステイナブルな提案では、医療従事者への感謝を込めた「メサージュ・ド・ローズ」のペタル・リナブルー(1836円)の売り上げの一部を日本赤十字社の活動に寄付する。

「TOMIZ×ショコラティエ・パレ・ド・オール」の家で作るガトーショコラセット
「メサージュ・ド・ローズ」のペタル・リナブルー

 松屋銀座本店は、「日本の良さを改めて実感してほしい」との思いで日本の素材に着目。日本人ショコラティエによるこだわりのブランドを発信している。

 九州の農家や生産者から直接仕入れたフルーツなど九州の魅力をつめ込んだ「アトリエ・キュイエール」の九州ショコラ(3996円)のほか、「セイスト」のショコラティエ、瀧島誠士さんが個人的に縁のある生産者から取り寄せた食材を使ったチョコレート「ワンダフルエンカウンター」(2001円)を販売。国内では珍しいカカオ栽培を始めた沖縄県のチョコレートブランド「オキナワカカオ」の新ショウガと月桃のチョコレート(1512円)などもある。

「セイスト」のワンダフルエンカウンター

 おうち時間が増えることで、自分へのご褒美としてチョコレートを買う人が増えると予想して、高級志向のチョコレートも強化している。「パレスホテル東京」のスペリュール(5400円)のほか、「ブルガリ・イル・チョコラート」のチョコレート・ジェムズ(3万1円)など。

「オキナワカカオ」の新ショウガと月桃のチョコレート

 西武池袋本店は「つながるチョコレート」をテーマに、作り手支援や環境保全などにつながるチョコレートなどを提案している。イチ押しは持続可能な社会を目指す「マーハチョコレート」の生ガトーショコラ(2700円)。現役大学生の田口愛さんが立ち上げたブランドで、「チョコレートが大好き」という思いから単身でガーナに行き、チョコレート工場を設立。カカオ農園の人たちの支援もしている。そのほか、売り上げの一部がザンビアの女性支援に役立てられる「宮西達也うまそうチョコレート」のうまそうチョコレート(3024円)なども販売している。

 いつもと違ったバレンタインを迎える今年。家族や大切な人と、ちょっと特別なチョコレートで楽しんでみてはいかがでしょう。

「マーハチョコレート」の生ガトーショコラ
「西宮達也うまそうチョコレート」のうまそうチョコレート

(繊研新聞本紙21年2月5日付)

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