ユニクロはジル・サンダーとの協業商品「+J」を発売した。初日の11月13日はコレクションのフルラインを置く大型店に開店前から行列ができ、自社ECも完売商品が相次いだ。今、このタイミングで+Jを再び仕掛けた狙いは何なのか。ユニクロR&D統括責任者の勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員に聞いた。
(柏木均之)
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着続けられる服
最初の協業は06年にニューヨーク、07年にロンドンと旗艦店を出して、次はパリという時期。海外売上高はまだ小さく、認知も低かった。パリに旗艦店を出すなら、ユニクロがプライスだけでなくファッションの面でもリーダーシップを取ろうとしていることを知ってもらうきっかけを作りたかった。
カシミヤやジーンズなど手頃で品質の良い商品は当時すでにあった。長く着られるシンプルなユニクロの服に最高峰のデザインを加えるには何をやれば良いか考えてサンダーさんしかいないとなって、コンタクトし、我々の目指すもの、思いを伝えて具体化にこぎつけた。
+Jは09年のパリの店のオープンを皮切りに世界で発売した。あれから11年が経ち、今や海外の方が店舗数も売り上げ規模も大きい。振り返ると、+Jはユニクロが世界に知られるきっかけを作った。98年の日本でのフリースブームに次ぐ、エポックメイキングなプロジェクトだったと思う。
あの当時の+Jを今でも着ているという人がいる。デザインが素晴らしく、品質も良い商品だからそれが出来る。ユニクロはサステイナビリティー(持続可能性)に関連する取り組みを今相次いで始めているが、長く愛され、着続けられる服を提供するということは、それ自体すごくサステイナブルな行為だと言える。
自信とエネルギーを
+Jをもう一度やるため、昨年12月からサンダーさんとやり取りをしていたが、コロナ禍によって3月からドイツと東京に離れてのコミュニケーションを強いられた。そこでサンダーさんが強調していたのは「服は人々に自信とエネルギーを与える存在であるべきだ」ということ。
サンダーさんは時代の変化を捉え、新しいアイデアを提供し、それを実現してくれた。次シーズンも続けるのか、今は言えない。ただ今回、11年前を知る大人はもちろん、若い世代にも長く愛用してもらえる、時代に寄り添ったクリエイティビティーが込められたコレクションが出来たと自負している。
物作りの面でも同じ素材、同じ工場を使っても、縫製や仕上げなど、今まで意識していなかった部分に注意を払うだけで、シャツ1枚でもこれほど出来栄えに違いが出るんだと気づかされた。我々はこれからもっと成長しなければいけないが、そのためにやれることはまだまだある。今回の協業でそのことを認識することができた。