海外で商売をして行く為に2(坪内隆夫)

2015/10/31 14:42 更新


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6月半ばのメンズ、レディースプレコレクションから始まったSS2016シーズンの販売も、先週パリの展示会が終わり、ミラノでの最後の商談も終わって終了しました。

残念ながらここ2、3年はヨーロッパの展示会も入場者が少なく、以前のように物を買う気で来ているバイヤーもかなり少なくなっているのが、バイヤーの目の置き場でよくわかります。これから何か新しい販売方法が始まるのかもしれません。

現在ヨーロッパでの販売はとても大変です。これまで長い間日本のブランドの販売をヨーロッパでやって来た中で最も大変な時期になってきています。

ここ最近の日本ブランドの海外進出について私が率直に思っている事を書き留めます。きれいごとだけを書いてもしょうがないと思うので本当に思った事を書かせてください。

 



私がヨーロッパから販売しているヨーロッパブランドは世界各国に向けて販売しているので、世界各地の市場の様子や流れが良く分かります。その動きはシーズンごとに速くなって来ています。

現在はどこの市場でもこれまで以上に値段設定が重要視されます。7、8年前だとロシア市場が良く、そのマーケットで高い物も売れていました。どこのショールームに行ってもいかにもロシア市場を狙っていると思われるコレクションが多く見かけられました。

しかし、ここ4、5年はマーケットも冷え込み、以前ほどロシアのバイヤーも見なくなり、高い物も売れなくなってきました。その後はどのショールームも中国に向けて販売し始めてきましたが、ここ最近は中国のマーケットもプライスに対してかなりシビアになってきました。それでも、このマーケットはかなりの金額のオーダーをして行くお店はまだ有りますが...

という事もあって、以前は面白いコレクションであれば販売をしてくれていたヨーロッパのショールームでも、最近は直ぐに販売に繋がるようなコレクションしか置いてくれません。以前のようにショールームに余裕がないのだと思います。それに伴い、ショールームで以前ほど日本のコレクションを見なくなりました。

海外では日本のファッション、デザイナーに多くの人が憧れを持っています。日本人が良い物を作るのは皆良く知っています。ただ、今なぜそれが販売に繋がらないのか、私なりに考えてみました。

 -価格が高い

-海外の市場にコレクションがあっていない

-日本の延長線上で海外で商売をしている

-続けて海外でコレクションを発表する

この辺が問題ではないかと思われます。

■価格が高い

日本も昨年、消費税が上がり消費が鈍ったと聞きますが、ヨーロッパの消費税は日本に比べそもそもかなり高いです。

ちなみに私の住んでいるイタリアでは22%です。これだけでも日本に比べ14ポイントも高いということになります。これにショールームに販売を委託した場合、そのコミッションは12%から15%、送料それに関税など様々な経費が卸値に加算され、ヨーロッパのお店のマークアップはその卸値の2.7倍です。

例えば日本から1万円の商品をヨーロッパにいれると商品の量が少ない場合、ヨーロッパに入ってきた時点で送料、関税をプラスして約1万3500円になり、その2.7を掛けると3万6450円になってしまいます。果たしてその値段になった時にヨーロッパの人がどう評価するか。

 

 

 

■海外の市場にコレクションがあっていない

日本で受ける商品、受けない商品が有るように、海外にあったコレクションを作らなければ行けません。

日本で高い評価を受けたからといって海外でもそうなるとは限りません、特に日本のレディースコレクションは日本特有な物が多いです。海外の女性に言わせると、「日本人が着ているのは可愛いけど、私は着ようと思わない」というコレクションが多いです。

 ■日本の延長線上で海外で商売をしている

日本での商売の仕方と海外でのそれとは違います。日本でのやり方を無理矢理海外に持て行っても通用しません。日本のやり方を通す部分も必要ですが、「郷に入れば、郷に従え」で、考え方を柔軟にし、場合によってはその市場にあったやり方をする事も必要です。

また、日本のブランドが海外のお店と取引をする場合、取引先のお店のグレードも変わってきます。上記でも説明したように、日本の商品は海外に持って行くと値段がかなり上がり、一般的に日本ブランドは海外では高級なお店にしか入れません。

その場合、そのお店にあった商品(価格)なのか、付加価値の出し方等日本のままで持って行って大丈夫なのか?、熟考する必要があります。

海外で展開して行く場合、日本の延長線上で海外で商売をするのではなく、0の状態から商売するつもりでないとうまくいきません。またヨーロッパではコレクションが出来上がった時の販売ミーティングでその価格が適当かどうか皆で決めます。

値段が高いと判断された場合、メーカーもかなり頑張って低い値段設定をしてくれます。日本のブランドでこういった場合で価格を落としてもらったことは有りません。この値段になった、ではなく、この値段で販売するという物づくりが大切です。

 


 

■続けて海外でコレクションを発表する

海外でコレクションを紹介して行くには、かなりの費用、ノウハウ、準備、それにエネルギ−が必要です。

進出する前に果たしてこれから本気で海外でやって行く気持ちが有るのか、その準備はできているのか...まだ準備が出来ていないのであれば焦って進出する必要は有りません、そのかわり一度進出するからには本格的にずっと継続しなければ時間と費用の無駄になります。また途中で一度やめてしまうと、もう一度やり直した時にはまた0からはじめる事になります。

日本のブランドが海外でビジネスをして行くのは思っている以上に大変な事です。

特にこれまで日本のファッション市場は大きく、日本のメーカーはドメスティックマーケットだけで商売ができていたので、日本のブランドがやり方の違う海外に出て行く事に慣れておらず、それはかなり大変な事です。

これまで様々なブランドを見てきて、正直な所、海外にトライしてすべてのブランドがうまくいくかと言えば残念ながらそうでもないと思います。海外で商売をしようとしても少数のブランドしか残っていけない。それ程海外での販売は大変だという事です。

続けて行くということはお金もかかり、資本力がなければ続けたくても続けられません。ある程度の資本力が必要です。それに、事前にしっかりとしたビジネスプランを作り、どこかの部分で絶対的な強みのあるコレクションを作って行かなければなりません。




坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。

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