東コレ17年秋冬 英国調の落とし込み方に注目

2017/03/30 06:26 更新


 ショーだけでなく、インスタレーション形式の発表でも、今季は印象的なブランドが目立った。演出も含めて、英国調などのトレンド要素をブランド流にうまく落とし込んでいる。

(五十君花実、赤間りか)

 ケイタ・マルヤマ(丸山敬太)は、銀座の老舗ブリティッシュパブを舞台にインスタレーションを見せた。会場に入ると、そこは60年代のロンドン。モデルたちはお酒を片手に、楽しそうにダンスをしたり、おしゃべりしたり。プレフォールに続き、スウィンギング・ロンドンがテーマになっている。レトロなチョウのモチーフをポイントにしたスカラップヘムのフィット&フレアドレスに、クラシカルなチェック柄のテーラードジャケット。襟のファーがゴージャスなコートは、ジャカード織りの動物柄が可愛い。よく見ると、英国紳士の伝統、キツネ狩りがモチーフになっている。シノワズリの要素はブランドのアイコンの一つだが、今季はブリティッシュチェックでチャイナドレスを作り、シャーロック・ホームズを思わせる鹿撃ち帽と合わせているのが楽しい。久々にメンズアイテムも登場した。やはりこのブランドは、演出も含めた世界観の見せ方がうまい。

ケイタ・マルヤマ

 ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)もブリティッシュをテーマにインスタレーションを行った。ガラス張りの青山の直営店の中をモデルたちが整然と行き交い、音楽が変わると楽しそうにダンスをする。まるでショーケースを観察するかのように、観客はそれを外から眺めるという趣向だ。クラシカルな壁紙風のバラの花模様に、グレンチェックを拡大したグラフィック、レーステープを重ねて作ったタータンチェックと、柄のモチーフは非常に英国的。それを、メッシュなどの素材感や箔(はく)プリント、カラフルな配色などで、ミント流のモダンでクリーンなバランスに変化させる。前シーズン打ち出した、ストリートウェアに通じる量感のフォルムも継続。ドレスにワイドパンツを重ねるなどの重心の下がったレイヤードが着こなしの軸になる。ショーケースの後に服をじっくり見る時間があると、より魅力を感じられた気もする。

ミントデザインズ


ミントデザインズ

 15年春夏に東京ニューエイジの枠でデビューしたコトナ(山下琴菜)が、ウィーク前に初の単独インスタレーションを行った。アーティストの玉山拓郎が装飾を手掛けたというカラフルでモダン、同時にシュールなムードの空間で、モデルがポーズを取る。キルティングにフィッシュボーン柄ツイードを組み合わせたロングコートに、襟の大きなボアのブルゾン、色落ちしたデニムなどが軸。レースを重ねたブラウスやシースラインのドレスといったつやっとしたデザインがあっても、あくまで肩の力の抜けた柔らかい女性像がキーになる。プロダクション、デザインともに課題はあるが、一歩一歩ステップアップしなければという心意気を感じた発表。

コトナ

 タエ・アシダ(芦田多恵)はレトロイメージのプリント、クラインブルーやパープル、英国調ツイードにメタリックと、この秋冬注目の色、柄、素材で作るエレガントなミックススタイル。きゅっと絞ったウエストから広がる布の動きと、コートやスカートに使った大小のタブベルトのディテールが新しい。しなやかなロングドレスにショールカラーのマスキュリンジャケット、ブラを透けさせたブラウスとソルト&ペッパーツイードのタイトスカートにファージャケットなど、相反するアイテムを自由に合わせた。

タエ・アシダ

 ユキ・トリイ(鳥居ユキ)はスモーキーな薄ピンクからペトロールブルー、ブラウン系と、色のニュアンスとその組み合わせのセンスで新しい気分を出す。秋冬だけど色を着たいと思わせるコーディネートは、グレンチェックやハウンドトゥース、レトロな壁紙のような柄のアイテムがミックスされる。ウエストから大きく広がるロングコートなど、アイテムそのものもちょっとレトロ。襟元からなびかせたり頭に結んだりしたスカーフが今年っぽい。

ユキ・トリイ

 ヒロココシノ(コシノヒロコ)は、アートからの着想を思わせるコレクション。キュービスム絵画のような柄や、目が錯覚を起こしそうなオプティカルアート調の柄をニットのドレスやトップにのせる。カットによって、つぼを思わせる立体的なカーブを取り入れたドレスもアートのイメージにつながる。パワフルな色の表現の一方で、レザーで見せるシャープなルックも。

ヒロココシノ

(写真=加茂ヒロユキ)




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