東コレ17年秋冬 絶妙な量感で見せるベーシック

2017/03/27 06:50 更新


 「人気ブランドは、ショーではなく展示会形式での発表を選ぶ――」。そんな傾向が指摘されてきた東京だが、今季は実力派のブランドが待望のショーを行い、変化が感じられる。同時に、数シーズン前にショーデビューした若手ブランドでも注目株が育ってきており、今後の東京の目玉になりそうだ。

(五十君花実)

 ハイク(吉原秀明、大出由紀子)がブランド初のランウェーショーを行った。人気ブランドだけに、会場にはモード誌で活躍するスタイリストや有力店のバイヤーがずらりと並ぶ。

 整然としたムードの中を歩いてくるのは、ベーシックウェアを絶妙な量感のバランスで再構築したアイテムのモデルたち。ベーシックの再解釈は立ち上げ時から掲げてきたコンセプトであり、今季はライダーズジャケットやフライトジャケット、アウトドアウェアを着想源にした。

 ライダーズジャケットはノーカラーのウールコートやボリュームスリーブのドレスになり、フライトジャケットはプルオーバーやボレロに変わる。文字にするとなんてことはないが、上質な素材と緻密(ちみつ)に計算されたボリュームによって、このブランドにしかないバランスを生んでいる。長方形の布を生かしたマントやチュニックは、動きに合わせて揺れるドレープが美しい。肩をカッチリ作り込んだノーカラージャケットやテーラードジャケットで見せるスーツスタイルも新鮮だ。縦に長いフォルムで、ずしんと響くような重厚感がありながら、深く取ったサイドスリットから布がひるがえる軽さもある。360度の布の動きが感じられるのは、ショーならでは。

ハイク

ハイク

ハイク


 先シーズンから変化の兆しがあったケイスケヨシダ(吉田圭佑)が、さらに良くなった。得意とするスクールユニフォームの要素に、トレンドのブリティッシュやレトロな感覚を盛り込んで、ナード×ストリートという自分のスタイルをがっちり作っている。

 学生服のようなジャンパースカートとタータンチェックをドッキングしたドレスに、ジップによって開いたフードがセーラーカラーのように広がるトップ。合わせるボトムは、ジップ開閉でフレアシルエットにしたパンツや、V字の切り替えをポイントにしたプリーツラップスカート。V字切り替えは、レトロなスキージャンパー風ブルゾンと、ハイウエストのコーデュロイパンツとのど派手なコーディネートにつながっていく。学校用ジャージーのようなトップにヘアバンドなど、ブランド初期に通じるやぼったさを散りばめつつも、ウエストを大胆にカットした千鳥格子のドレスやフレアパンツなどで挑戦的な感覚もしっかり入っている。

 15年春夏のデビュー以来、ファッションの本道からあえてそれて、それを茶化すような発表を続けてきたが、反抗期を越えて、ファッションの王道に真っ向勝負を挑むと覚悟を決めたようだ。

ケイスケヨシダ

ケイスケヨシダ


 先シーズン大きく化けた印象のアキコアオキ(青木明子)も引き続きさえている。17年春夏で見せた袖の量感をポイントにしたスタイルを発展させ、今季はランジェリーやボディーを感じさせる要素を強く盛り込んだ。ジャケットのサイドを大胆にカットしたトップから肌があらわになり、マキシスカートは足の付け根までスリットが入る。シャツの上にブラジャーを重ねたコーディネートや背中が大きくあいたビュスティエドレスもあるが、そこに媚(こ)びるようなエロチックさはなく、感じるのはむしろ潔さや力強さだ。ギャザーやフリル、花の刺繍、ピンクといった女性の大好きな要素を詰め込んでいて、非常に女性的でソフトであるのと同時に、芯の通った強さがある。それは青木自身のキャラクターにも通じる。前回からの発展形として、プロダクションの精度も上がったように感じる。今後、どんな新しいアイデアを見せてくれるのかが楽しみ。

アキコアオキ

アキコアオキ


 ミューラル(村松祐輔、関口愛弓)は〝ノスタルジア〟をテーマにブリティッシュとレトロな要素をミックスした。タータンチェックのバリエーションや花柄のチュール刺繍、ボリュームたっぷりのフェイクファーを組み合わせてガーリーなバランスに落とし込む。ギラッとしたラメやベロアの光沢で少しだけ毒っけを盛り込むのがこのブランドらしい。会場が暗くて、せっかくのショーがあまり見えなかったのが残念。

ミューラル


 アクオド・バイ・チャヌ(チャヌ)は、前シーズンに続き、ジップのディテールをポイントにしたシャープなメンズ、レディスウェアを揃えた。МA‐1ブルゾンやライダーズジャケットに、多数のジップを取り付けてポイントにする。ジップの開閉による異素材切り替えなどの要素も盛り込んだ。アイテム1点ごとの完成度は比較的高いのだが、前回からのアイデアの発展がもう少しあるとより良かった。

アクオド・バイ・チャヌ

(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)



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