【記者の目】苦境にあるアパレルメーカーの卸ビジネス 売り先は既成概念捨て目線変える

2021/03/13 06:27 更新


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 アパレルメーカーの卸ビジネスが苦境に立っている。コロナ禍前から売り上げや売り先の縮小、代金回収の低迷など、課題山積だったところにコロナがのしかかってきた。展示会を開いて注文を取り、時間をかけて納品するのはオールドビジネスと言われるが、目線を変えればまだ可能性があるのではと考えてみた。

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オールドもメリット

 アパレルビジネスにあって、店頭販売の数カ月から半年前に展示会を開き、専門店などから受注し、決められた納期に納めるという手法は長くとられてきた。

 古い話だが、SPA(製造小売業)を始める前のワールドの1986年7月期の売上高は1414億5500万円。売上高の大半が卸売りで、基幹ブランド「コルディア」だけで450億円以上売っていた時代だ。営業利益率は14.3%で、当時としては特別高いものではなかった。専門店卸の掛け率は参考小売価格の65%掛けの買い取りが普通だったから、もうからないはずがない。右肩上がりの時代だったため、アパレルメーカーは売り上げを伸ばそうと、委託や返品、値下げを許し、代金回収率も下がり、ビジネススキームが経年劣化していくことになった。

 展示会手法による卸ビジネスのメリットを整理すると、①受注した分だけ生産すればいいのでロスが出ない②納期まで一定の期間があるのでオリジナル生地を作ったり、じっくり生産でき独自性を出しやすい、といったことにある。今風に言えばサステイナブル(持続可能)な受注生産で、経費をコントロールしやすく利益も生みやすいビジネスと言える。

 デメリットは、既存売り先が減って売り上げを伸ばしにくい、売り先の信用問題といったところか。しかし、これらの点はこれまで販路をかたくなに専門店と思ってきたことに一つの要因があると思う。

 ウィファブリックのアパレル在庫のマッチングサイト「スマセル」を取材したときに感じたことがある。このサイトは元々BtoB(企業間取引)を想定していたが、購入側に個人バイヤーが目立つようになってきた。「メルカリ」や「ラクマ」で量を売る力のあるインフルエンサーなど個人バイヤーが増えてきて、19年秋から軸をここに設定し直したという。コロナ禍で在宅勤務が増え、個人がバイヤーとなって参加する例はますます増えているという。

 スマセルでは今、在庫だけでなく新商品を掲載する例が増えている。二次流通を通して個人バイヤーが新たな市場を開拓してきたことに目を付けたアパレルメーカーが出てきている。

 こんなデータもある。経済産業省がまとめた18年のフリマアプリ推定市場規模は6392億円(前年比32.2%増)で大きく成長している。メルカリが20年2月に発表した「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」調査によると、その効果は年間約484億円あるとした。分野別では「家電・スマホ」「エンタメグッズ」などを抑えて「ファッション」が最も効果が大きいことがわかった。二次流通で買った人はその商品の良さを知り、一次流通でも買う傾向があるということだ。

メルカリが公表したフリマアブリ利用による新品商品への消費喚起効果調査

新市場にアプローチ

 問題に戻ると、核心部分は、インフルエンサー、KOL(キーオピニオンリーダー)をはじめ、個人が新たな市場を開拓、大きくしており、ここにアプローチしない手はないということだ。こうした個人バイヤーに共通するのは、取引で駆け引きすることなく、支払いもちゃんとすると聞く。

 レディスアパレルのロストアンドファウンドがIT企業と共同で始めたレディスブランド「ミカーレミカーレ」はこのところ、KOLを対象とした販売に力を入れ、既存ルートの専門店と両輪にしようとしている。展示会に呼ぶだけでなく、撮影に便利な場所や機材も用意するほど力が入っている。商品を売ってくれるだけでなく、デザインや価格に対して的確な意見を出してくれる点も評価している。

KOLへの販売を強めている「ミカーレミカーレ」

 同じレディスアパレルのフィオールフィオーレも比較的早くからインフルエンサーと取り組んでいる。インフルエンサーならみな調子がいいわけではなく、「感謝の言葉をきちんと伝えるなど人としてできていて、こだわりを積み重ねてきた人」が成功していると分析する。

 ある服飾専門学校はインフルエンサーに関する授業を設定できないかと考えている。これまでの対面販売も大事だが、デジタルによる販売がますます重視され、ビジネスに使えるスキルを教える必要が出てきたという認識がある。

 卸売りビジネスの現在、将来を切り開くため、既成概念にとらわれることなく、販路を見つけることが重要と思う。

古川富雄=大阪編集部長

(繊研新聞本紙21年1月25日付)

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