時期分散で魅力薄れる夏セール

2015/06/26 07:40 更新


 今年の百貨店や商業施設の夏のセールも、6月後半から7月中旬にかけての分散開催となる。アパレル業界からは近年、百貨店に対して早期化の見直しが要望され、一部の百貨店や商業施設は7月中旬以降に開催時期を変更した。

 しかし、業界全体の足並みは揃わず、分散化によるセール自体のパワーダウンも顕在化している。今年はセール期間中のプロパー商品の販売強化も打ち出されているが、需要回復につながるか疑問も残る。

 かつては7月中旬以降に行われていた夏のセールが年々早期化してきたのは、市場での競争の激化が要因だ。商業施設ではテナント企業によるタイムセールやプレセールなどが常態化し、百貨店も時期を前倒ししてきた。しかし、アパレル側はセールが早過ぎることで、本来は夏物のプロパー商品を販売すべき期間が短くなり、機会損失や値引き販売の増加による損益悪化への懸念を表明してきた。

 一部の百貨店や商業施設のセール時期の見直しも、こうした指摘を受けたもの。実際に時期を遅らせた館では、プロパー売り上げが順調に推移するなど成果も出ている。早くセールを始める百貨店でも現場は7月中旬以降に変更したい、という意見は少なくない。

 それでも、業界全体では分散開催が続き、集客力が落ちるなど、セールそのものの魅力が薄れてきた。そのため、アパレルや、専門店からも開催の時期を揃えて欲しい、という要望が強まっている。

 

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 セール期間の足並みは揃わないが、プロパー商品の強化は共通して言われるようになった。セールを早くから始める百貨店や商業施設でも、今年はセール期間中のプロパー商品を大きく高める方針を打ち出している。

 消費者に価値を認められないような商品は、いくらセールで価格を下げても売れない。価値が認められれば、セール期間中でもプロパーで売れる、という消費動向が顕著になってきたからであろう。

 ただ、要請を受けたアパレル側の反応は複雑だ。多くは不採算のブランドや売り場を集約化する「構造改革」の真っ最中。そこにセール期間中のプロパー商品を要請されても、買い取りでもなければ、十分な供給は難しい。

 無理に商品を作って売り上げを追えば、在庫が増える。それよりもプロパー販売比率を上げて損益改善を先行させたい。それにはセール時期の荒れた売り場より、プロパーをしっかり売る店を優先したいのが本音だ。

 本来、百貨店でも商業施設でも、プロパーで売れる商品をどう作り、どう売るのかがビジネスの出発点。開催時期や商品政策もこの出発点に立ち返って議論を進めるべきであろう。



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