【奮闘する国内工場】縫製業・ニッター調査から㊦

2019/08/13 06:29 更新


 生産能力の増強や生産性の向上のため、設備投資に踏み切る縫製工場やニッターが増えてはいるものの、国内の物作り企業の課題も多い。

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 アンケート調査によると、「現状と今後の課題」(複数回答)については、「人材確保」が56社と一番多かった。「労働条件の改善」39社、「技術継承」33社、「受注量の増加」32社、「新卒採用」26社、「設備投資」25社、「運転資金」16社、「後継者難」10社、「その他」4社と続いた。

■業界が意識変革を

 人材確保については、「都会でも〝超田舎〟でもない北関東の地方都市であっても日本人の採用は厳しい。外国人技能実習生制度も利用しているが、さらなる重要性を感じている。日本人と外国人があたり前に一緒に仕事ができる職場になっていかなければ国内製造業は消滅するという危機感を持っている」「新卒を採用しても初任給が最低賃金に近いところでしか出せない。縫製業の技術・技能が真の意味で尊重されなければ若い人はやる気があっても挫折する」「既存のアパレルメーカーこそ、日本に自社縫製工場をつくり、そこが存続するような人件費・維持費を考えた工賃の見直しをしないと〝使い捨て服〟は終わらない。消費者の意識改革の前にアパレル業界が意識を変えるべき」など厳しさを反映した意見が多かった。対策としては「縫製業のイメージ向上と待遇改善しかない」と思いながらも実現する体力がないのが現状だ。


■国内生産の強み生かす

 「19年度の新卒採用」は「なし」が40%、「1~4人」が40%、「5~9人」が7%、「10人以上」が1%、「無回答」が12%。「20年度の新卒採用」は「なし」が29%、「未定」が10%、「1~4人」が36%、「5~9人」が8%、「10人以上」が4%、「無回答」が13%という結果となった。現状の「外国人技能実習生制度の利用」は40%だった。

 国内工場が抱える生産人口の減少による技術力・生産性の低下という課題を克服するためには、「30年先を見据えた生産現場の再整備が必要。特に過疎地域の工場運営は抜本的に見直し、スタッフがやりがいとプライドを持ち、のびのびと力を発揮できる環境を整えるため、行政・地域と一緒に考えていきたい」「旧態依然とした労働集約型から進化し、世界水準の高品質を維持しながら生産性を高めることが絶対条件。そのためにはデジタル化・機械化を含めた取り組みが急務。さらに小売りも含めた垂直連携によるプロパー消化率の向上とトータルコストの削減が欠かせない。〝必要な時に、必要なものを、必要なだけ作る〟という国内生産の強みを生かすべき」などの前向きな意見もあった。これからも業界全体として、服作りの未来を考えていくべきだろう。


《アンケート協力企業》

 アーテス、青木縫製、アシダニット、アリエ、石島産業、一戸ファッションセンター、今城メリヤス、岩手アパレル、岩手モリヤ、内田縫製、ウメダニット、エミネントスラックス、及川被服、大河内メリヤス、岡部縫製、奥山メリヤス、小倉メリヤス製造所、オリジナルテクノロジー、勝田洋裁、角南被服、加富屋、川島、クリヤマ、ゴーダEMB、小林メリヤス、佐田、サンクミル、三恵クレア、サンユーニ、サンヨーソーイング、サンライン、島崎、笏本縫製、栖、精巧、センチュリーテクノコア、ソーイング・リヴ、第一ニットマーケティング、大和服装、高橋ニット、立野、辻洋装店、ティー・エフ・シー北陸工場、東京モードソーイング、東和プラム、トップレディ、中重、ナカノアパレル、永山産業、那須夢工房、ニットオカザキ、花澤ニットデザイン、パルコモード、ファイブワン・ファクトリー、フクエー、ブティック創、プラス・ワン、米富繊維、丸和繊維工業、ミナカワ洋装縫製、峰田メリヤス、都ドレス、メルボ紳士服工業、モデリア、モンスター、ヤマサキ、吉田元工業、リゲル、六郷プラニング、ワークス(50音順)

(おわり/繊研新聞本紙19年7月11日付)



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