合繊メーカー、商社にとってスポーツ分野は衣料の柱の一つ。合繊の機能を生かしたテキスタイル、製品は国内だけでなく、海外のスポーツ・アウトドアブランドにも採用されてきた。これまで各社は年2シーズンの展示会をベースに新作を提案してきたが、コロナ禍をきっかけに見直しを迫られ、取引先の企画サイクルに合わせた個別提案も強まっている。また、サステイナブル(持続可能な)の流れが一層加速し、テーマの深掘り、切り口の多様化が進んでいる。
スポーツのBtoB(企業間取引)ビジネスはこれまで、年間カレンダーがほぼ固定され、テキスタイルでは春に1年半後の秋冬向け、冬に同じく1年半後の春夏向け商材が提案されるのが通例。国内各社は海外合同展で先行提案し、その後、国内取引先向けに自社展示会で新作を披露してきた。
ところが今年はコロナ禍でこれが一変。1月の独ISPO(国際スポーツ用品見本市)はリアルで開催されたものの、春以降は世界的な感染拡大で国内外ともにリアル展は休止され、急きょ企画したオンライン展や個別のオンライン商談で代替した。
オンラインとリアル併用
店頭での製品販売も春以降、各国のロックダウン(都市封鎖)でストップ。世界的に生地、製品の流通在庫が膨らみ、次シーズンに向けた受注や企画商談も鈍くなっている。
一方で、一部明るさが見える分野もある。実店舗の営業が厳しい半面、ECは世界的に堅調。また、ヨガに代表される自宅で出来るフィットネスが注目され、自宅を快適に過ごすリラックスウェアとのボーダーレスなアイテムも志向されている。海外では、ロックダウン下でも短時間の運動が許され、ランニングなどの需要が改めて向上。アウトドア関連も全般に堅調だ。
例年、各社が春に開く国内展示会は5月に集中するが、今年は緊急事態宣言の期間と重なり、休止を余儀なくされた。代替として東レや帝人フロンティアはオンライン展示会に切り替え、重要顧客企業にはサンプルを送付して個別のオンライン商談を開くなど、仕込んできた開発品を何とか提案した。
一方、12月の冬展は都市部中心に感染第3波の懸念はありながらも、人の移動や対面は春より緩和され、各社ともオンラインとリアルを組み合わせて商談の機会を確保した。「やはりお客さんとの話し込みの中で次の開発のネタを拾っていくことが多く、対面でなければ進まない」(帝人フロンティア)と、リアル商談の重要性を再確認。各社とも集客は多く、取引先の反応も良かった。
客先に応じシーズン提案
展示会のスタイルは22年春夏向けを主軸にしながらも、シーズンのサイクルを見直す動きも出ている。東レは春夏をベースに、防寒アウター用など秋冬向け製品サンプルも展示。取引先によって企画のサイクルが変化しており、これに柔軟に対応する。旭化成アドバンスは、得意の軽量ナイロン織物で主用途のダウンウェアが、この間の暖冬傾向で動きが鈍っており、ウィンドブレーカーのような1枚物ジャケット狙いで透湿防水の3層品などを充実させている。
コロナ禍で取引先が多くの製品在庫を抱えたこともきっかけに、シーズン前の大量の作り込みから引き付け型にシフトする動きも出ており、テキスタイル・製品の企画提案、供給のサイクルも変化を迫られる。
クラレトレーディングは差別化原糸を使った高付加価値品と同時に〝納品力〟をアピールする。ベトナムでの生地~縫製の一貫体制で国内取引先向け製品納めで実績を伸ばしているが、ベトナム、中国、日本の適地生産を組み合わせ、リードタイム短縮を図る。3極で小回りの利く昇華転写プリントの加工体制を整え、ロットや納期に応じて3極を使い分ける。