パリ五輪の開幕まで、2週間となりました。スポーツの魅力とは、単なる力試しや筋力アップ、健康維持だけでない。どんな相手であろうと対等に向き合い、ぶつかれる。これも、良さの一つではないでしょうか。スポーツを通してチームワークの向上や、知識・技術の共有に励んでいる業界内のスポーツコミュニティーをまとめました。
「しゃべりながら」の良さ生かして
TSI ゴルフ
ゴルフブランドを管轄するウェルネスディビジョン。ここに在籍する販売員らを中心に、沼田正義ウェルネスディビジョン第2事業部販売第1セクション・ザ・ハウスチーフマネージャーが月に1度、ゴルフを楽しむ会を作っている。通称〝沼田カップ〟だ。
発足のきっかけは、ゴルフ未経験だった沼田チーフマネージャーが、ゴルフブランドに配属されたこと。「ゴルフとは」を知るために、気の合う仲間を集めて5年前に始めた。徐々にメンバーが増え、現在は「交流できる」最大組数の4組(16人)をめどに活動している。年齢も性別もキャリアも様々だが、ゴルフを通して「対等に話せる」のが魅力という。
活動日は、販売員の休日に合わせて平日で調整。毎度、ラウンドするグループのメンバー分けは当日のお楽しみだ。軽くお酒を飲んでギアを上げてから、1日かけて練習する。練習着は社販したものを着用し、服装のルールや着心地などを再確認する機会にしている。新卒の研修で、座学と実践でゴルフを学ぶ時間があるが、「さわり程度」になるため、この会で道具の使い方を知る社員も多い。
ラウンド中は「仕事の話はほとんどしない」が、しゃべりながらできるスポーツというのがゴルフの良さ。スコアよりも楽しみ、交流を目的にしている。年始には合宿も。初心者から全国大会入賞者まで、分け隔てなくいそしんでいる。
自由に仲良く、一般客向け教室も
ムラサキスポーツ スケートボード
屋内・屋外スケートパーク「ムラサキパーク立川立飛」(東京都立川市)併設店舗の販売員が、空き時間にスケートボードなどを楽しんでいる。店舗の連帯感が高まる効果があるほか、日々の接客にも生かしている。
同店・施設は、23年7月にオープンした。店舗にはスケートボードなどのプロ選手が数人、販売員として在籍しており、一般客向けに教室を開いている。
「自然発生的に販売員がスケボーやBMXをやり始めた」と谷克彦店長。上級者の教えを受けながら開店前や退勤後の時間を使って、自由に楽しんでいる。今では18人の販売員のほぼ全員が参加している。
個人競技なので、シフトに合わせて自分のペースで参加できるのが強みだ。仲間の技への挑戦を「リスペクト」する文化があるスポーツのため、仲も深まる。40代の谷店長から10代のアルバイトまで年齢層の広い店舗だが、和気あいあいとした雰囲気だ。
経験者目線で接客できるメリットもある。「商品だけでなく、技術面や競技との向き合い方の話もできる。お客様との距離の近さはどこにも負けない」
販売員の姿を見て興味を持ち、店で道具を買って教室に通う客も多い。楽しみながら、新規客の開拓にもなる活動に育っている。
勤務地や立場を問わずに一体感
コメ兵ホールディングス eスポーツ
場所を問わず参加できるオンラインゲームと、立場を超えて切磋琢磨(せっさたくま)できるスポーツを〝良いとこどり〟するeスポーツで、社内の風通しをさらに良くしている。
eスポーツ部は22年7月、社内きってのゲーム好きである寺田洋平さん(営業本部営業企画統括部教育企画部)が立ち上げた。コロナ禍で社内の交流が希薄になる中、「ゲームを通じてオンライン上のコミュニケーションを取れれば」と考えたことが発足のきっかけだ。
現在の所属は11人。全国から、経営企画部や商品部など多様な部署の社員が集まり、1、2カ月に1回、オンライン上でゲーム対戦を行うほか、半年に1度、社内大会を開催。成績優秀者には賞品も贈り、モチベーションを高めている。
全国に支店がある同社だが、eスポーツなら「エリアを問わず、チームワークを高められる」と寺田さん。活動を通じ、「普段どこで働いているか知らない」という社員同士もすっかり良く知る間柄になっている。
オンライン上ではあるが、対戦中は歯に衣着せぬ発言が飛び交うことも。上司・部下を問わず、平等に競い合える「スポーツだからこそ」の側面も備え、対等に仲を深めている。
今後はゲームショーの見学会など、リアルな交流も計画中。メンバー増員に向け、社内での認知度向上にも努める。
部署超えてチームワーク深まる
丸昇 バスケットボール、釣り
発足のきっかけはバスケットボールが好きな営業担当の社員だった。周囲は「一緒にしたら面白そう!」と賛成し、安藤明弘社長の快諾を得て23年1月に発足した。メンバーは全従業員が対象で、初心者でも家族でも参加可能だ。ひと月から3カ月に1度の頻度で事前に社内報で呼び掛け、参加できる人が活動している。当日は準備運動とフリー練習の後、チームに分かれてシュート対決や本格的な試合を行う。
ユニフォームはプリント加工業ならではだ。営業担当の社員がグラフィックを作成し、職人がプリントしたシルクスクリーンのTシャツやパーカをチームウェアとして着用している。
活動は体を動かしリフレッシュになるほか、「部署を超えて交流、相談できる場になっている」とPR・マーケティング事業部の品田芽吹さんは話す。
安藤社長は以前から社員の心理的安全性を高めるため、バーベキューや慰安旅行を行うなど社員間の交流を大切にしている。バスケ部の活動も対等に言い合える関係性が築かれ、同社の行動指針「チームワークを大切にしよう」につながっているという。
23年11月に発足した釣り部もあり、魚が釣れた時はとても盛り上がるそう。各自で持ち帰り「おいしくいただく」活動も行っている。
(繊研新聞本紙24年7月11日付)