【レディス特集】アパレル企業のサステイナビリティー コロナ禍で取り組み加速

2020/08/28 06:00 更新


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 コロナ禍によって日本のアパレル産業の過剰生産、在庫問題が浮かび上がった。4、5月と都心部中心に百貨店、SCが臨時休業し、商品が行き場を失った。以前から作りすぎ、安売り、廃棄といったことが指摘されてきた。CO2(二酸化炭素)排出など環境負荷と合わせ、サステイナビリティー(持続可能性)の観点からの批判も高まってきた。これに呼応する形でアパレル企業の新たな取り組みが始まっている。

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環境負荷が高い産業

 グローバルに見てアパレル産業の課題はまず、世界の産業のCO2排出の約10%を占めることがある。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によると、航空業界と海運業界の合計を上回るエネルギーを使用しているという。全世界の排水の約20%を生んでいるとの指摘もある。環境負荷の高い産業であることは意識せざるを得ない。

 もう一つの問題が、見込みによる大量生産、さまざまな安売り、大量の在庫、そして最終的な廃棄・焼却といった負のサイクルだ。

 日本では毎年100万トン以上の衣料品(下着、靴下を含む)が供給される。少し古いデータだが、中小企業基盤整備機構の「繊維製品3R関連調査事業」報告書によると、09年の衣類供給量は111万トン、このうち廃棄衣類となったのが94万トン。家庭からの廃棄が86万トンと大半を占め、事業所からの廃棄は8万トンにとどまる。廃棄の94万トンからリユース、リサイクルされるものもあるが、6割以上の59万トンが埋立・焼却となった。大半が再利用されない状況は過剰生産、安売りの横行のつけという側面がある。いずれにしても、産業として放置できることではない。

 この原因になっているのは、①ファストファッションが定着し以降、価格競争が激化し供給量が増えた②トレンド性があり、価値が下がりやすい③持ち越しをするにも倉庫代がかさむ④二次流通があまり活用されてこなかった――ことなどがある。

 こうした課題に取り組むにはいくつかの方法がある。

 ①トレンド品より定番品を増やし長く着られるものを増やす②作りすぎないMDとし、プロパー消化率を大幅に上げる③二次流通を積極的に活用する④在庫の出ない受注生産を取り入れる⑤在庫や残布をアップサイクルする――などが考えられる。


◇4年後に受注生産8割

 レディスアパレル、靴の製造販売、クロシェ(神戸市)は24年までに受注生産販売比率を80%にする。めどは21年春夏10%、同秋冬30%、22年春夏50%、同秋冬60%、23年春夏70%。大半を受注生産にすることで、見込み生産による作りすぎ、セールなど安売り、廃棄といった悪循環を止めるという決断を下した。ホームページにも明示しており、顧客の支持を得ながら進めていく考えだ。

 同社はセレクトショップ「ジャスミンスピークス」「トレコード」、バレエシューズ「ファルファーレ」を主力とする。百貨店などでの期間限定店は年間約200回は開く。しかし、コロナ禍で全店が臨時休業となり、期間限定店も中断、売り上げが取れなくなった。そこで積年の課題である過剰生産、廃棄問題に正面から取り組み、新たな時代に適応する方向性を決めた。

 受注生産をするにあたっては三つの約束を掲げる。①必要とされる分だけ生産することで在庫を圧縮し、商品の廃棄による環境破壊を防ぐ②待ってもらうことにより、価格面で顧客に還元しニーズに寄り添えるようになる③考えに賛同してくれる企業や職人、クリエイター、顧客と円陣を組み、地球にやさしい新しい循環を作る――とした。

 セレクトショップでも期間限定店でも置くのはサンプルとし、納品するのは約1カ月後を想定している。他社との競争に打ち勝つには、商品そのものの魅力と、待ってもらう間も楽しんでもらう仕掛けが必要となる。その点で重視しているのが商品の特徴を伝えやすいライブコマースだ。既に4月下旬から取り組んでおり、全販売員が経験した。リアル店舗以上の売れ行きとなったケースも出ている。

 また、この取り組みを浸透させるため、ポッドキャストで「ここち良さを、あたらしい視点から」という配信をスタートさせる。「常識にとらわれず新しい風を前向きに取り入れる」ため、沼部美由紀クロシェホールディングス代表の異業種の友人や経営仲間を招いて色々なテーマでトークセッションする。

受注生産にかじをを切ったクロシェはライブコマースに力を入れている

◇商品廃棄ゼロを宣言

 「アクシーズファム」を展開するアイジーエー(福井県越前市)は7月1日、「商品廃棄0」を宣言した。廃棄をなくし、資源を無駄にすることなく、世の中に少しでも貢献したいという思いを表した。

 アクシーズファムは店舗、ECで販売し、在庫はアウトレット品として販売する。それでも毎年少量ながら焼却処分をしてきたという。3年前から消化率90%を目標とし、作りすぎないMDに改め、アウトレットを縮小し、通常店舗の販売力を上げてきた結果、20年2月期の消化率は99.4%まで高まった。それでも売れ残った商品は約1万点あり、廃棄対象になったため、「焼却はしない」方針を掲げることにした。

 7月からはウィファブリック(大阪市)の運営するアパレル在庫の企業間取引サイト「スマセル」の活用を始めた。在庫を捨てるのではなく、循環させるというスマセルの再流通の仕組みを利用することにした。1店舗に減らしたアウトレットでは、少しほつれや傷のある商品は修理してB品として販売することにした。

 生産過程で出る余剰在庫や端切れもこれまでは廃棄していたが、昨年から福井県の障がい者支援センターひまわりと組み、端切れを活用した雑貨作りを始めている。

アイジーエー「アクシーズファム」の端切れを活用した小物入れ

◇循環型ファッション

 ジュンは「ロペ・エターナル」で今年夏から、循環型ファッションの取り組みを始めた。「フロム・レフトオーバー・ファブリックス・アワー・アップサイクル・プロジェクト」で、過去のコレクションの残布を使い、6~9月に四つのリミテッドエディションを販売するものだ。直営ECサイト「ジャドール・ジュン・オンライン」とアトレ恵比寿店で扱う。

 カギになるのはブランドの根本にある「循環」という考え方とする。これまで全国各地の素材産地と協業し、伝統工芸や職人技を現代的な解釈を加えて継承してきた。伝統技術を現代へ、人から人のつながり、縁を大切にといった思いが背景にある。17年秋のリニューアルで「シーズンレス」を掲げ、通年着られる上質な服作りを進めてきたこともプロジェクトのきっかけになった。

ジュン「ロペ・エターナル」の残布を活用するアップサイクルプロジェクト

 商品は京都の染め工房で独自色に染めたシルクサテンの円柱状クッション(小4000円、大5000円)、尾州の機屋と共同開発したシルクノイルのあずま袋(4サイズあり、1500~4000円)、遠州の機屋で生産したギザ綿のドビー織りを再活用したピローやブランケット(ともに6000円)などがある。

 商品は本社内のアトリエで社内スタッフが製作からラッピングまで対応する。シリアルナンバーもディレクターがタグに書き込む。売り上げの50%はファッションモデルで環境活動家の小野りりあんさんが立ち上げたアクティビストハウス「the roots」(ザ・ルーツ)に寄付する。ブランドの「海と風と太陽に捧ぐ」というテーマに沿い、自然に敬意を払いたいとの思いがある。店頭では環境配慮を全面には出さず、「日々を素敵に暮らしてもらう」ものとして提案している。

 服を生産すると残布はどうしても出るため、再活用して新しい物を生む循環型ファッションを社内に訴え、業界にも広がるようにしたいとしている。

ジュン「ロペ・エターナル」の尾州の機屋と共同開発したあずま袋

◇長く愛される定番

 マザーズインダストリーは主力ブランドの「ミズイロインド」をはじめ、定番品にシフトすることでプロパー消化率を上げるとともに、長く着用してもらう路線を強化してきた。創業から19年7月期まで16期連続の増収を続け、コロナの影響が出る直前の19年8月~20年1月も既存店売り上げが2ケタ増となり、前年同期比25.7%増とした。さすがにそれ以降はコロナ禍で減収が続いたが、回復基調にある。

 好業績が続いてきた最大の理由は顧客とのつながりを強めながら、トレンドにかかわらず売れるベーシックアイテムを増やしてきたことにある。特にミズイロインドはノンエイジでナチュラル、スタイリッシュというコンセプトを創業期から続けている。

 コロナの影響が出てからも6月はほとんどセールをしなかった。ECが好調で、店舗再開もあり6月売り上げは9%増とした。消化率も95%と高い水準を維持した。

 7月に入ってからは顧客向けのシークレット的なセールは実施したが、流動客を対象とする手法は取らなかった。こうした販売手法は顧客と向き合うために取ったという。

 それでもこれまでの延長線上ではコロナ禍は乗り越えられないとして、笹野信明社長があらゆる現場にマネジャーとして関わる体制を取り始めた。企業の運営、あり方を根底から見直し、存在理由をはっきりさせることがポイントという。

 「エモーショナルな物作りとサステイナビリティーのバランスを取り、心のぜいたくを満たしつつ、環境や社会に貢献できる存在になっていく」ことを目指している。

マザーズインダストリーは長く着られる定番アイテムを強化している
(繊研新聞本紙20年8月26日付)

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