「シブヤ109ラボ所長の#若者とダイバーシティー」

2021/06/16 06:26 更新


Z世代×ジェンダー

 先日シブヤ109ラボで、Z世代のLGBTQ+(性的少数者)やジェンダーに対する意識を調査しました。全体として、LGBTQ+をはじめとするダイバーシティーについて、すでに日常的に体現していたり、相手を傷つけないよう自ら情報を積極的に収集するなどの姿勢が見られました。Z世代の姿勢を、社会全体として見習うべきことが多くあるように感じます。

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枠にはめないで

 調査結果からは、彼らが今後世の中のスタンダードになって欲しいこととして、「男らしさ、女らしさなどではなく、自分らしさを認めてくれる社会」「決めつけや固定観念や偏見で判断されない社会を目指したい」などが上位に挙がり、性別や見た目などにとらわれず「個人」を認め合うことを望む意見が多く見受けられました。

 このような「個に目を向けてほしい」というZ世代の思いは、ジェンダーの課題に限った話ではありません。日々Z世代と話していると、様々なテーマにおいて「枠にはめたり、固定観念にとらわれず、〝個人〟に目を向けたコミュニケーションをしてほしい」というのが彼らの理想であることを感じます。

 SNSで、様々な価値観に触れられるようになった社会で生まれ育った彼らには「人それぞれ価値観が異なり、幸せや豊かさの定義も違う」という考え方が根底にあり、固定観念を「正」として相手を否定したり、強要することはナンセンスと考えているのです。

 しかし、彼らの世界の中心であるSNSでは、「個人」でいるには細心の注意を払うことが必要なことも確かです。

 SNSは、多様な価値観や考え方に触れられるというポジティブな場である半面、多角的な意見を受け取る場所でもあります。投稿に対して否定的な意見を受けたり、中には炎上してしまう可能性もある場所でもあり、Z世代もそこに対する恐れを感じていることもまた事実です。

 多様な価値観・視点により全員一致の「正解」がなくなり、自分の正解が他人の不正解であることも往々にしてある今、様々な話題における「自分はこう思う」という自分を主語にしたスタンスを表明することは非常に勇気のいることです。先述したような「人それぞれ色んな考え方がある」「誰かを傷つけたくない」という思いが強いZ世代には、より一層覚悟が必要なことだと思います。

「代弁者」が必要

 だからこそ、突き抜けた「個」を発信している〝推し〟や〝インフルエンサー〟に注目が集まり、「個」を明確にしている人を応援することでその人の「スタンス」に相乗りし、間接的に自分の「個」を周囲に共有していることもあるのかもしれません。

 このようなZ世代の実態は今後、企業としても見逃せないことだと思います。彼らは物やコトをただ「消費する」のではなく、企業やブランドが提供する商品やサービスの背景に共感し、購入することで企業のストーリーに「参加」します。それによって、自身のスタンスを周囲に表現するように変化しています。逆に言うと、商品やサービスに背景やストーリーが見えないものは、お買い物リストの選択肢にも入れてもらえなくなります。

 今後5年後、10年後に消費の中心となるZ世代の持つ「消費の軸」に適応し、選ばれる企業・ブランドであり続けるためには、自社の存在意義から社会課題に対する向き合い方まで、様々な観点における自社のスタンスを熟考し、明示していくことが必要になると考えます。

 同時に、私たち企業やブランドは「消費者のスタンスの代弁者」であるという意識を持ち、ターゲットと向き合っていく姿勢もまた、より重要になっていくのではないでしょうか。

●長田麻衣(おさだ・まい)
シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものはうどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標はシブヤ109ラボを日本一の若者マーケティング機関として認知してもらうこと!


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