Z世代の価値観や実態について解説していると、多くの企業が彼らの社会的課題に対する意識実態に対して注目していることを感じます。シブヤ109ラボでも20年にZ世代のSDGs(持続可能な開発目標)に関する意識調査を実施しており、今年2年ぶりに改めて調査を実施したところ、調査結果にある矛盾が生じました。
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行動に移せていない?
今回の調査では、社会的課題に対して約6割が「関心がある」と回答しています。これは2年前とほぼ同じ数値であり、高い水準で推移していることが分かります。そして、関心はあるものの「実際の行動に移せていない」のは約7割と、こちらも昨年同様、関心度と行動が伴っていない結果となりました。
しかし、「社会的課題解決の手段として実施したことがあること」を聴取すると、マイボトルの使用や「廃棄を減らすために今あるものを長く大事に使う」などの回答が多く、約7割が何かしらの行動を起こしている実態が見られたのです。
ここから、彼らは自分たちの取り組みが不十分だと意識する一方で、日常生活では具体的に行動している実態が分かります。この矛盾の背景には、二つの要因があることが考えられます。
無意識と謙遜
一つは、彼らの日常にエコフレンドリーな選択肢が溶け込んでおり、〝意識せずとも行動に移すことができる〟生活環境です。これは近年社会的課題に取り組む企業が増えたことが影響しています。またインタビューでは「ペットボトル飲料を買うことに罪悪感がある」「過剰包装の商品は気が引ける」などの声も出ています。社会的課題に加担してしまうことに対して敏感で、察知する基準が高いことも、無意識な行動につながっているようです。
もう一つは、彼らの周囲に対する〝謙遜(けんそん)〟の姿勢です。インタビューでは、実際に具体的に取り組んでいることがあっても「他の人に比べて私なんて何もできていないです」と話す人が多く、自身を過小評価している実態がみられます。SNSなどで社会的課題に積極的に取り組み発信している人が多いことや、彼らの「周りからどう見られるか」を気にしてしまいがちな意識が、このような姿勢につながっているようです。
Z世代は企業が社会課題にアクションを起こしていく際のパートナーとしても非常に心強い世代です。しかし彼らには、定量調査では測りきれない複雑な社会課題への意識と向き合い方があるため、企業としては彼らの気持ちに寄り添う姿勢が重要です。
(繊研新聞本紙22年10月12日付)