シブヤ109ラボ所長のZ世代社員との向き合い方 個に目を向けて対話が生まれる関係性を

2022/04/13 06:28 更新


 4月から新生活が始まりました。Z世代の若者にも進級・入学の時期となり、学校によっては今年は久しぶりにオフラインでの入学式を実施したようです。新しい年度を迎え、新入社員が入社したという企業も多いのではないでしょうか。最近「上司としてZ世代の社員とどのように接するべきか」というお問い合わせをよくいただくので、僭越(せんえつ)ながらいくつかアドバイスを申し上げます。

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決めつけはNG

 まず、一つ目は「個に目を向けて接すること」です。近年はZ世代への注目も高まり、彼らに関する情報が増えていますし、シブヤ109ラボでもこれまでZ世代の価値観や実態について解説してきました。

 しかし、これらの情報はあくまでZ世代全体の傾向であり、Z世代全員に100%当てはまることではない場合もあります。

 そもそもZ世代は情報環境の変化などで、価値観や実態が細分化・多様化しており、彼ら自身も多様な考え方があることを前提にコミュニケーションを取っています。

 そのため、チームの一員になる彼らに対して「Z世代だから○○なんでしょ?」と決めつけてしまうことは避けなければなりません。もちろん世代だけでなく、ジェンダーなどの固定概念での決めつけも要注意です。

 たとえば「Z世代は社会課題への関心が高い」という調査結果が出ていますが、あなたの隣にいるZ世代の新入社員の方には必ずしも当てはまらないかもしれませんし、「今の若者は会社の飲み会が嫌い」とも言われていますが、もしかしたら先輩方との仲を深めたいと思っており、誘われるのを待っているかもしれません。

 ぜひ「Z世代って○○と言われているけれど、あなたはどうなの?」など、大きな主語でとらえられた情報だけで相手を判断するのではなく、目の前にいる個に目を向けてコミュニケーションを図ってみて下さい。

「そもそも」を再定義

 もう一つは、「対話が生まれる関係性を築くこと」です。Z世代が生きる時代は、「こういう状況であること=成功」といえるような、社会共通で目指されるロールモデルとなる人や状態がない、いわば『正解のない時代』です。

 そのため、彼らは仕事においても前提を疑うことがあると思います。「なぜ」このルールや仕事が必要なのか。そして「こうあってもいいんじゃない?」という選択肢を広げ、多様な価値観に対応していくことも視野に入れて「そもそも」の再定義を求めています。

 誤解しないでいただきたいのですが、彼らは上の世代の方々の培ってきた価値観を否定したいわけではなく、もう一度改めて考えてみようよ、という「問い」を投げているのです。

 なので、仕事の中でもし彼らと考え方や進め方において齟齬(そご)があったとしても、「いいからやれ!」というように、頭ごなしに強制するのではなく、「このルールがある理由」や「この仕事が○○につながっている」など、仕事の背景にある目的を共有したり、「なぜそう感じたのか」をヒアリングするなど、対話ができる関係性を築くことができると良いでしょう。

 新たなスタートを切るZ世代の皆さんは、これから社会人の先輩方に学ぶべきことはたくさんありますし、逆に私たちが、時代の最先端を生きるZ世代の新入社員の皆さんから教わるべきこともたくさんあるはずです。それぞれの強みを、同じフィールドで発揮できるよう、ぜひ「個との対話」を念頭に置いて接してみて下さい。

●長田麻衣(おさだ・まい) シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は若者のリアルをテーマにした書籍を出版すること。


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