肉やチーズ、バターや卵などの「動物性」食品を、大豆やエンドウ豆、海藻類や野菜などの「植物性」素材で再現するプラントベースフードが近年話題だ。国際的な環境・人口・食糧問題の解決への貢献はもちろん、健康志向やビーガン・ベジタリアンの増加、アレルギー対応などの流れなどを受け、まさに「次世代食」として世界的に規模を高めている。
国内プラントベースフード市場は新型コロナ感染拡大直後となる20年以降、急速に伸長。前述の健康価値やSDGs(持続可能な開発目標)・サステイナブル(持続可能な)との高い親和性に加え、食品業界では話題の「フードダイバーシティー」への対応力や植物性食へのポジティブイメージなどを背景に非食品を含めた各分野の企業がこぞって参入している。
様々な分析データが存在するが、22年度の市場規模は約1200億円前後(豆乳を含む・日本食糧新聞社推定)にまで拡大した。同規模を分かりやすく例えると、ほぼ全ての家庭に常備されている家庭用マヨネーズの約2倍、近年、急速に使用経験率が上昇している同オリーブオイルの3倍に相当する。
また、ジャンル別にみても、大豆ミートを軸に最も高い認知を誇る「植物肉」、主に最先端の油脂技術でコクなどを再現する「植物乳」(バターやチーズ、クリーム)、最近の鶏卵相場高騰やアレルギー対応などの面で注目を集める「植物卵」など幅広い。これらに加え、最近では主に業務分野で、鶏油(チーユ)(家系ラーメンなどで用いられる香味油)やラード、だしなど調味料分野でも開発・商品化が進み、今後、多くの場面での活用が予想されている。
一方で、欧米諸国と比較した場合、市場規模はもちろん、認知や喫食経験率の面などで大きな差があることは否めない。欧米諸国での22年の市場規模は1兆6000億円に到達したと推定され、30年には20兆円を超える予想もある。肉食文化の根付きや環境教育の在り方が我が国とは根本的に異なることが主な理由として挙げられる。まだまだ日本はプラントベースフード分野では「小国」に位置付けられ、総じてトライアル喚起を優先すべき局面にあると言えるだろう。
とはいえ、産業的側面からいったん離れ地球規模でのプラントベースフードの最大意義を考えた場合、間違いなくそれは、環境保全性や資源効率性などに優れた「サステイナブル性」と断言できる。特に①畜産動物飼育比での水資源の効率化②同じく電力消費や二酸化炭素排出量などのエネルギーの効率化③畜産動物から発生するメタンガス削減効果——の3点は、プラントベースフードを次世代食の筆頭と位置付ける上で不可欠な要素だ。
(日本食糧新聞社・村岡直樹)