PFAS(有機フッ素化合物)使用製品禁止へ 米国の一部の州で規制進む

2023/08/02 06:26 更新


 PFASは、数千種類ある有機フッ素化合物の総称。撥水(はっすい)・撥油性、耐熱性、電気絶縁性など様々な特性がある化学物質で、テキスタイルや食品パッケージ、調理器具、化粧品、乳幼児向けを含む幅広い製品に使われてきた。一方、PFASの一部の物質は、がんなどの健康被害を引き起こす毒性があり、自然環境で容易に分解されないため〝永遠の化学物質〟と呼ばれ、世界的に規制が進む。米国でも一部の州で規制が始まり、撥水加工した生地やそれを使ったアパレル製品を輸出する日本のメーカーも確認が必要だ。

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対象、時期を段階的

 メイン州は、今年1月1日付で新品のカーペット、ラグ、布の加工でPFASが使われている場合、小売り・卸を禁止した。

 ニューヨーク州は、12月31日付でプロ向けの制服及び厳しい気象条件下で着るアウターウェア以外、PFASを含んだアパレルの販売を禁止する。

 コロラド州は24年1月1日付で、カーペットやラグ、布の加工についてPFASが使われた場合、小売り・卸を禁止する。

 同州では25年1月から、さらに規制の対象をカーテンや家具、ベッドリネン、タオル、テーブルクロス、布で覆った家具などに広げる。カリフォルニア州でも同月から、PFASを意図的に含む新しいテキスタイル製品の製造、小売り・卸販売を禁止する。テキスタイル製品にはアパレルやアクセサリー、バックパック、カーテン、シャワーカーテン、ホームファニシング、ベッドリネン、タオル、ナプキン、テーブルクロスなどが含まれる。カリフォルニア州はまた、厳しい気性環境下で着用する新しいアウトドアウェアに関してもPFASを意図的に含む場合、その製造・流通・販売を禁止する。これには釣りやセーリング、カヤック、登山などで着るウェアが含まれる。ただし、PFASを含むとわかりやすく明記してある場合は、製造や販売が可能になる。テキスタイルメーカー及びアパレルメーカーの間では、「発がん性がある物質が含まれているという表示を見て買いたいお客がいるか」との懸念から、PFASを含まない加工に切り替える傾向が出ている。

 27年1月1日付で、コロラド州がアウトドア用テキスタイル製品や家具に関してPFASを意図的に含んだ商品の販売・流通を禁止する。28年1月1日付では、カリフォルニア州が厳しい気象環境下で着用する新品のアウトドアウェアでも、PFASが含まれていれば製造、流通、販売を禁止する。

高額な罰金額に

 ジェトロ(日本貿易振興機構)が開催したPFASの規制に関するウェビナーで講演したエンバイロメント・ジャパンの玉虫完次代表によると、違反した場合は1日当たり日本円換算で最高約420万円が罰金として科せられる(※)。違反を初めて認識した時までさかのぼって日数で算定されるため、かなりの高額になり、罰金額はインフレに伴って上がる可能性がある。罰金のほか、民事・刑事罰が科され、販売・流通停止となり、法規制を順守するための設備投資などの修復費用、再発防止のための従業員の教育訓練、コンプライアンス(法令順守)監査などの費用がかかる。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

※出典=CIVIL MONETARY PENALTY, U.S. Code Citation, 15 U.S.C. 2615(a) (1)TOXIC SUBSTANCES CONTROL ACT (TSCA)、2022年、1ドルを100円として換算

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