【海外ビジネスの現状と課題④】アキラ・ナカ

2018/07/09 13:00 更新


海外ビジネスの現状と課題 海外進出するデザイナーに聞く④ アキラ・ナカ セールスパーソンからのフィードバックを重視 コアな部分と数字を取れるデザインの両面を

 「アキラ・ナカ」は18年春夏からパリで単独の展示会を始め、プレコレクションを含め3シーズンが経過した。セールスパーソンとしてモルドバ出身のオルガ・ウラジミールさんと組んで、3シーズン(半年)で15店と取引をするまでになった。

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 海外ビジネスを模索した当初はセールスエージェントを回ったが、彼らのサービス(ロジスティック、書類作成、契約代行)が自分たちには必要ないと分かった。むしろ、ブランドをたくさん抱えておらず、アキラ・ナカに特化してくれる人を探す中でウラジミールさんと契約した。

 セールスエージェントとの契約には、ブレイクコントラクト(解約条件)やテーブルコミッション(売り上げで変動するコミッション)など、様々な事項がある。それをそのまま受け入れて契約すると、ビジネスが成長する中で時に大きな足かせになる。アキラ・ナカは、伸び率とベースのテーブルがミックスされたコミッションを独自に計算するなど、細かな契約書を用意してエージェントを探した。ブランドのために時間を割いてくれること、セールスの状況や市場の望むものをフィードバックしてくれることを条件とした。

18~19年秋冬コレクションから

 クリエイションは必要だが、世界市場ではデザインの重要性だけではなく、戦略やプロダクトのクオリティーが欠かせないと見ている。それを進めるためにもエージェントに委任するのではなく、自ら展示会を開きセールスパーソンからフィードバックを受けることが重要だと考えた。

 最初のシーズンの取引先は6店舗。オファーがあってもアカウントを開けずに我慢した店もあった。それは有力店と先に取引を進めることで、以降のビジネスが有利になると判断したからだ。

 展示会前にはインビテーションを送るだけでなく、セールスパーソンがロンドンやアジア、ロシアなどを訪れてバイヤーと事前ミーティングをすることで有力店を展示会に集めてきた。セールスの材料として、繊研新聞の英語版「THE SENKEN」のデザイナーランキングも活用した。

 現在の主な取引先はバーニーズニューヨーク、アロットマン(クウェート)、ツム(ロシア)など。他の店のアカウントを開ける前にこの③社との取引を戦略的に進めた。アロットマンは最初のシーズンから卸価格で1000万円以上を仕入れる有力店。バーニーズニューヨークとは1年間、全米でエクスクルーシブ契約を結んだ。これからは、これらの有力店との契約や消化状況もセールスに活用して、次なる店のセレクションを進めていく。

 課題は中東からロシアまでの気候の違いの中で、市場を理解しながら限られた品番で何を出せるかだという。相手が買い続けたいと思うブランドのコアな部分も作りながら、取引先が継続してビジネスしていけるデザインの両面を進める必要を感じている。

服に仕掛けるものが育つかどうか

デザイナー・ナカアキラ氏

ナカアキラ氏

 海外のバイヤーからは、「今のメインストリームと違う。ストリートとも『セリーヌ』や『グッチ』とも違う。ヨーロッパとジャパニーズ、ベルギーがミックスしているから面白い」と言われました。でも、デザインにしてもクオリティーにしても、自分たちが作りたいものはまだまだ先にあります。

 それに向けてさらに磨いていく。服に仕掛けるものが育っているかどうか。時代観、クオリティー、モダンさの精度が上がっていればいい。それがあれば修正できると思っています。


■データ

コレクション発表形態/パリ展示会

セールス形態/セールスパーソンを立てて単独の展示会

海外取引先/15店舗

現在の売り上げ比率と目標/日本70%:30%→3年後に日本50%:海外50%


(連載おわり)



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