【海外ビジネス現状と課題③】ビューティフルピープル

2018/07/09 06:30 更新


海外ビジネスの現状と課題 海外進出するデザイナーに聞く③ ビューティフルピープル 取引はウェブショップが先行 新しいデザインチームで基盤を強化 

 「ビューティフルピープル」は17~18年秋冬からパリでプレゼンテーションをスタート、18~19年秋冬からパリ・コレクションでショーを開始した。ショー開始とともに18~19年秋冬からショールーム「トゥモロー」と契約した。トゥモローは単なるショールーム機能だけでなく、売掛金の回収までを任せられる。海外に常駐スタッフを置いていないこともあり、回収のリスクがないトゥモローに決めた。

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 セールスの基本姿勢は、自分たちから営業をかけないこと。国内でも、これまでそういうスタンスでビジネスをしてきた。こちらから営業をしないことで、相手が見つけてきてくれる関係を作ってきた。17~18年秋冬はプレゼンテーションの記事を見て問い合わせがあり、バーニーズニューヨークなど7軒が展示会に訪れ、5軒で海外のビジネスがスタートした。18年春夏はネッタポルテなどのウェブショップが展示会に来て、さらに2、3軒増えた。18~19年秋冬はショー日程とショールームの展示会日程が重なり、ダブルサンプルを作っていなかったこともあって、バイヤーに見せられる期間が限られた。カナダのウェブショップなどからオーダーがあった。

18~19年秋冬コレクションから

 国内では地域の一番店を狙っていったが、海外は現状ではネットが強い。大手専門店は即決せずに継続して見ている状況で、「これが今のブランド力」と冷静に見る。目標としているのはドア数を集めることではなく、パリ・コレクションの経費を海外の売り上げで回す規模にすること。1億円の粗利というのが将来的な目標となる。

 課題は価格帯。トゥモローは売掛金の回収など商社的な機能を持っているが、その分、マージンも高い。マージンの比率も反映して価格を設定していくと、ラグジュアリーブランドと同じ価格帯になる。とはいえ、「セリーヌ」と同じ機屋を使って高いクオリティーで作れば、同じような値段になるのは当然なのかもしれない。品質に関する適正価格を考えてきたが、現状を今後どうやって克服していくかを考えている。

 将来的には世界のどこで買っても同じ値段のビジネスができることを目指す。今のクオリティーを維持しながら売るためには相当な知名度がいる。そのために、海外だけでなく国内ビジネスをより強固にすることを考えている。今のデザインチームの流れとは違うことを作るチームを立ち上げて、メンズを本格化することを考えている。

「モード」を追うのが今は楽しい

デザイナー・熊切秀典氏

 今までは国内のトレンドの中で自分たちなりの回答を出してきた。すごくとがった層だけじゃないところも狙っていた。パリに出たことで、今は「モード」を追いかけられるのが楽しい。マーケティングを考えずにやるビジネスもある。クリエイションを追いかけて良いんだって思ってやっています。もちろん、テキスタイルのこだわりとかは前からあったし、それをやっていくと値段はラグジュアリーと同じで、コンテンポラリーの市場にはならない。覚悟を持ってパリに行ったが、そこでビジネスはついてくるだろうという楽観性は相変わらずでした。国内の基盤があったからそんな考えでもできた。海外と国内は違う事業として考えていますが、国内での新しい基盤作りも進めています。

熊切秀典

■データ

コレクション発表形態/パリ・コレクションでのショー

セールス形態/ショールーム「トゥモロー」

海外取引先/13軒

現在の売り上げ比率と目標/日本9:海外1→3年後に日本2:海外1



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