オムニチャネル進捗を読む⑨ 産業と共存共栄

2018/01/06 06:00 更新


《連載 オムニチャネル進捗を読む 16年度ECアンケートから⑨》ECモール IT駆使して産業と共存共栄

 16年度国内ファッションEC比率(本社推定)8.6%をけん引してきたのが大手ECモール。消費者の利便性に応えるとともに、ブランド・ショップの事業発展を支えるプラットフォームとして業界への影響力も定着した。EC比率2ケタ台が視野に入り、さらにブランド・ショップのオムニチャネル戦略が進む中で、ECモールには最新IT(情報技術)を駆使した満足のいく購買体験の促進が求められている。

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50%占める存在感

 大手ECモールとSC運営の16年度EC業績をまとめたのが表。取り上げた8社の売り上げ合計は約3030億円で、前年度比較可能企業に絞った伸び率は28.4%。アンケート回答177社合計伸び率の23.2%を約5ポイント上回った。

 177社EC売上高にECモール販売が重複している分(ECモール比率回答企業77社の約1300億円)を差し引きして割り出したECモール比率は43.3%。ファッションEC市場で約5割を占めるほど、存在感は大きい。この伸びは、ブランド・ショップのEC強化により実在庫の確保やデータ連携が進んだため。ただし、商品取扱高で抜きんでているスタートトゥデイの1強体制が進んでいるのも現状だ。

今後の戦略二分?

 EC比率10%台が見えてきた今、各ブランド・ショップは直営EC強化やオムニチャネル対応を進める考えと、モール依存を強めるものとへ二分化していく可能性が高い。それに基づき、各ECモールの戦略やスタンスも変わり目を迎えている。

 ECモールの強みは「集客数」「ネットに特化したマーケティング・販促策」「商品データ作成」「即配送など物流支援」「アフターサービス」などだが、やはりブランド単位では届かない「集客力」が最大の魅力。その上で、「購買率」「商品単価」が自社が出店する販路としての材料になる。特に今後は個客へのマーケティング、CRM(顧客関係管理)、最後の1枚まで在庫が掃ける運用とシステム構築、AI(人工知能)導入などによる洋服購買に関心が薄い層へのアプローチと接点拡大が期待される。

 しかし、ここにきてモールの特徴に変化も生じている。高単価商材販売に強かったスタートトゥデイは平均商品単価が下落中。年内にオリジナルPBを販売することを懸念するブランドも多い。他モールでは、新規導入ブランドは伸びているものの、既存ブランドは伸び悩んでいる点で不満という声もあり、マーケティングやCRM自体の強化を望む声も上がる。その点で顧客基盤が小さなECモールは、ブランド直営ECを支援する動きを強める方向に進みそうだ。実店舗共存型モールも登場するなか、ECモール全体にはブランド・ショップEC支援から実店舗まで含めた全事業の課題解決が求められている。

(疋田優、中村維、五十君花実)=おわり



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