【連載】進化するオムニチャネル-⑥

2019/01/03 06:28 更新


■オンワードHD 接客支援にデータ活用

 今上期、EC売り上げを31.4%伸ばしたオンワードホールディングス(HD)。ネット起点の消費が拡大する中、商品情報をネットで早く出し、店舗との連動も強めている。下期からデータ分析を本格化し、物作りのための需要予測を課題にする。西森浩文オンワード樫山オムニチャネル推進室室長に聞いた。

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商品紹介早め

 前期、ECが伸びたのは、①ウェブで商品を早く見せた②海外販路の拡大③マルシェなど商品拡大――などが理由だ。ウェブで商品を早く見せ、店舗とキャンペーン連動ができた。消費者の情報収集源がスマートフォンへと大きく移る中で、店頭を含めデジタルマーケティングに注力できたことが大きい。海外は中国のTモールでの販売が伸びた。現地法人と連携し、トレンド、売れ筋分析が進み、「23区」を主軸に、在庫を中国に置かずに売れるようになった。

 オムニチャネル推進部の組織を大きく変えていない中で、企画・生産・マーケティングとのコミュニケーション・連動を密にしており、スタッフ一人ひとりが広告から物作り領域まで出せる力を拡大できている。具体的には、EC比率が高いブランドでは顧客の店舗併用が高まっており、ネット専用ブランド「ツーフェイシーズ」などは他ブランドのデジタル施策の参考モデルになりつつある。

 ただし、ECはキャンペーン商品など分かりやすい購買が多いのが実情なので、「店舗支援の役割」は明確にしている。

西森浩文オンワード樫山オムニチャネル推進室室長

評価はPVで

 店舗とECの連動は大きく進んだ。3年前に直営ECで店舗在庫を表示し、相互送客が強まった。販売スタッフのコーディネート画像は、スタッフと顧客とのコミュニケーションツールとなり、自由な時間に商品・情報・サービスに触れてもらうことができている。画像経由売り上げはPV(ページビュー)数で表彰し、スタッフのモチベーションを高めている。

 とはいえ、ECの全社への貢献はまだ不十分で、店頭サービスへの支援をより強めたい。特に客への情報提供やコミュニケーションは、要望解決に合わせてタイムリーに行いたいが、チャット機能が求められているわけではない。最適なコミュニケーションの形を追求したい。

 商品在庫・顧客情報の一元化で、データはかなり蓄積されてきており、新商品やサービスに活用するために分析・活用レベルを上げていくフェーズに入った。特にメーカーとして「データ→商品・サービスへの企て」が回るようなデータ分析・活用が重要になる。

 ただ、ファッション領域は簡単ではない。アマゾンや楽天など大規模モールでもビッグデータをもとにアパレル販売を牛耳ったりできていない。「データと感性の共存」が大事になる。

(繊研新聞本紙 2018年11月1日付)



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