【ニューヨーク=杉本佳子通信員】24年春夏ニューヨーク・コレクションは、引き続きシンプルでエレガントなテーラーリングが多い。その中でボディーにそっと沿わせたクリーンなカッティングが新鮮に見える。ウエストをやや絞り、堅すぎず柔らかすぎないシルエット。シンプルなだけに、カッティングと素材で完成度と鮮度に大きな差が出る。
プロエンザ・スクーラーのクリーンでミニマルなテーラーリングは、エレガントで存在感がある。テーラーカラーのジャケットをパンツにタックインしたルックもすっきり仕上げ、違和感がない。今シーズンの特徴は、ゆらゆら揺れる要素を様々な形で入れて、テーラーリングに優しい表情を加えたことだ。ジャケットとコートの後ろ中心には、わずかに動きを加える。シャツ、セーター、カーディガンは脇に深いスリットを入れ、肌をのぞかせる。プリーツ、ショールのような布使い、フリンジは優雅な動きを見せる。白黒も研ぎ澄まされた高潔さを感じさせるが、スカイブルーのレザーのコート、ブルーの濃淡を描くシフォンのプリントドレスの色の美しさに目を見張った。
ヘルムート・ラングはピーター・ドゥがクリエイティブディレクターに就任して初シーズン。1体目は鮮やかなピンクのテープをシートベルトのように斜めにかけ、パンツのサイドにも入れた黒のパンツスーツ。ラングの94年秋冬コレクションをほうふつさせる。ミニマルでエレガントなテーラーリング、ユーティリティー、ウィットといったラングらしい要素はおさえているものの、完成度、洗練、リアリティー、オリジナリティーが感じられないのは残念。イエローキャブの広告の写真をくしゃくしゃにしてコラージュしたプリント、ダメージ加工とポップなカラーブロックを共存させたパンツの若々しい発想には好感が持てた。