「トレンドからブランドを誕生させるのではなく、メーカーとして長年培ってきた独自の〝開発技術のプラットフォーム〟を最大限生かす」と強調するオンワード樫山。18年秋冬から、独自開発技術プロジェクト「アドバンスドシステム」事業に乗り出す。自社の技術・機能価値を順次ブランド化し、「新たな顧客創造」「販路拡大」「グローバル化」を推進する。
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デザインに自由度
第1弾が、特許を取得した新構造の高機能ダウン「アドバンスドダウンシステム」(ADS)だ。今秋から販売し、初年度は6万点、売上高で25億円、2~3年後に100億円を計画する。海外ブランドとの開発技術特許のライセンス契約も狙う。
ADSは、特殊テープをキルトステッチの代わりに使う。「デザインの自由度とファッションの選択肢を広げられる。高付加価値商品のニーズの高まりに対応する」(樋口剛宏執行役員宣伝・マーケティング室長)新機能が売りだ。特徴は、第一に特殊構造で衣料内部を空気が循環する。多くの空気を羽毛が含み、ふっくらと快適な着心地で、薄地でも温かい。針穴が減れば、羽毛を吹き出しにくい。羽毛を仕切るステッチも不要なため、デザインは自由になる。
商品構成幅広く
アドバンスドシステムは「テック(オンワード独自の先進テクノロジー)」「タレント(社内外のデザイナー、パタンナーによるクラフトマンシップ)」「ミキサビリティ(ユーザーによる着こなしの自由)」の三つの要素を事業の根幹に据える。
まず「スタンダード」「ニュージェネレイション」の2ラインでスタートする。スタンダードは自社NBで構成し、NBショップ、ECサイトのオンワード・クローゼット、期間限定店で販売。平均単価は5万円台。
ニュージェネレイションは、外部デザイナーや社内公募デザイナーを起用し、30代を中心に開拓するデザイン性の高いラインだ。今秋冬はデザイナーの中島篤と江角泰俊による6型、社内公募による10型、服飾雑貨を揃える。中島はミリタリー調ロングブルゾンをデザインし、「通常のミリタリーアウターは中わたを入れると重くなるが、ADSを生かすことで軽量にできた」という。チェスターコートを作った江角は、「ADSによる自由度を生かし、従来のダウンコートとは異なるテーラードのデザインを採り入れた。『ウールコートは着るが、ダウンコートは着ない』という消費者層の意識を覆したい」と話す。
販売はオンワードグループのネットワークを活用し、北米や欧州市場の拡大を狙う。ECほか、セレクトショップ向けの卸販売も増やす。価格は8万円台後半。19年秋には「プレミアム」ラインの販売を予定する。
(繊研新聞本紙7月24日付けから)