《新人店長のVMD物語》⑧広告と売り場は連動必須

2017/05/06 06:00 更新


12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。

前回、一押し商品は前面に集めて陳列してお客にアピールすることを学んだ麻紀。今日は売り場と広告のお話です。

♪♪♪

大谷マネージャーが、ルクリアの店頭にあるPOP(店頭広告)を見て麻紀に聞いた。

「今日から打ち出している広告はもう見たかな? そこにはどんなことが書いてあった?」

南城百貨店の今日付の新聞広告で、ルクリアも春のニットを紹介したのだ。

「えっと…『着回しがきくシンプルなデザイン。カシミヤのようななめらかさと光沢が特徴です』ですね」と麻紀は答えた。

「そうだ。ここにあるPOPと、同じ商品について書いているわけだけれど、アピールしている点が違うよね」


POPにはこう書いてある。

〈今春おすすめの上質ニット〉カシミアのようになめらかな最高級のシーアイランドコットンは、通勤着の一枚として大活躍!

大谷マネージャーは続けた。

「広告で伝えたいことと、POPで伝えたいことが違うのはどうしてかな? 初めに作ったPOPには、相当多い文字数で情報が羅列してあったけれど、それをベースに伝えたいことを整理して優先順位を決めると、POPでも広告でも内容は同じになるはずだよ」

麻紀は、広告とPOPを連動させるとは考えもつかなかった。POPについては何度か指導されたこともあり、作成も手なれてきた。しかし広告は、締め切りに間に合うようにそれっぽい文章を考えただけだった。

(マネージャーには手を抜くとすぐに見透かされてしまうなあ…)


麻紀はもう一度このニットの情報を整理することにした。

デザインを切り口として「着回しがきくシンプルさ」、素材では「最高級のシーアイランドコットン(日本では海島綿とよばれる)」、素材の特性としては「カシミヤのようになめらか」「光沢に富む」「強くて軽い」、希少性では「カリブ海の限られた島でしか産出されず〝奇跡の繊維〟とよばれる」、そしてオケージョンでは「デート服として」「通勤着として」などが挙げられる。


POPでは、最も優先すべき第1テーマの切り口を「アイテム」、第2テーマを「素材」、第3テーマを「オケージョン」としたが、広告では第1テーマの切り口は「アイテム」、第2テーマは「デザイン」、第3テーマは「素材の特性」であった。

マネージャーに指摘された通り、それぞれ異なる切り口をアピールしていたことが分かった。

正しい手順は、売りたい商品とテーマを決める。そして、それを広告に打ち出し、売り場では商品がVP(ビジュアルプレゼンテーション)や固まりとして視認されるようにして、POPで表示する。

そうすることで来店の際に、広告に載った商品を売り場で容易に見つけることができ、確実に伝わるようになる。広告と売り場を連動させることで購買に結びつくのである。

♪♪♪

※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。

(繊研新聞2013年の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)



この記事に関連する記事