《新人店長のVMD物語》⑥もっと伝わるPOPの秘訣

2017/04/29 06:00 更新


12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。

前回、麻紀は短い時間で簡潔に伝わるPOP(店頭広告)を学びました。今日のお話もPOPがテーマですが、接客が届かないブログやオンラインショップでお客を引き付ける際にも応用出来るハウツーがいっぱいです。

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麻紀は、数日前に大谷マネージャーからコートのPOP(店頭広告)の説明文が長すぎて読む気が起きない、そして内容が分かりがたいと指摘されていた。他のPOPも再考しなくては、と思い、本社のスーパーバイザーである瞳に報告した。

「POPについてそこまで考えたことはなかったわ…」と、瞳は驚いた。

麻紀が相談したのは、今店頭に出ている新作のニットのPOPについてだ。

〈スプリングコレクション〉
オフィスでも、女子会でも、一目置かれるきれいめニット。華やかな色が明るい印象にしてくれます。長め丈のトレンチコートでの通勤に、インナーとして合わせれば、今年らしい洗練された雰囲気に。オフの日にはフレアスカートとコーディネートして可愛らしく。着回しがきくシンプルさもうれしいデザイン。最高級のスーピマコットンを使用しているので、肌触りが良いのが特徴です。


「タイトルですけど、これはどこのお店でもよく見かけるので違和感はないですよね。でも大谷マネージャーによると、違和感のない言葉を使うことは悪くないけれど、その言葉に魅力を感じて説明文まで読みたくなるかどうかが重要なんだそうです」

「なるほど。言われてみればそうね。でもしっくりくる言葉って例えばどんなもの?」

麻紀は大谷マネージャーの話を思い出した。

季節が春だということは誰でも認識している。それをあえてPOPで伝え、「春の洋服はいかがですか」という漠然とした情報を発信するよりも、「春らしい色のニットはいかがですか」とか「今年の通勤着はシンプルニットがおすすめ」などのようにテーマを絞り、具体的な内容にしたほうが、興味をもって立ち止まる人が多いということだった。


2人は大谷マネージャーが言うように、テーマに優先順位をつけて整理してみた。今のPOPの第1テーマは「スプリング」、第2テーマは「ニット」、第3テーマは「華やかな色」なので、それぞれの切り口は「季節」「アイテム」「カラー」である。

変更後は第1テーマを「アイテム」、第2テーマを「カラー」、第3テーマの切り口は「オケージョン」とし、通勤におすすめという情報に絞ることにした。


〈今春おすすめの春色ニット〉 明るい印象にしてくれる華やかな色のニットは、通勤着のインナーとして大活躍!

麻紀には、POPが入店客数を増やすに違いないという自信があった。「スプリングコレクション」などの言葉が一番目立つPOPはよくあるが、テーマの切り口と優先順位を整理し、具体的な情報と的確な言葉でお客様の興味を引くことができる。そして他店との差別化ができることがわかったからである。

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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。

(繊研新聞2013年の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)



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