12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。
ついに今日が最終話です。
前回、VMDアドバイザーに任命された麻紀は、各店の店長を集めたミーティングで、売り場のVMDの問題点についての議題を進めました。その中で、伝えたいはずのトレンチコートの丈のバリエーションがアピール出来ていないことを指摘した麻紀。口ごもる中田店長。解決策はいかに＿＿。
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「ワンピースとのコーディネートはＶＰで見せるしかないので、丈のバリエーションは横のラックのIP（アイテムプレゼンテーション）で伝えるしかないと思います」と麻紀。
ワンピースとのコーデを見せながら、ラックで丈の種類を伝える
瞳は麻紀の話を聞き、感心していた。はじめは中田店長や他の店長たちも、難しいと感じたのか顔をしかめていたが、だんだん興味津々で熱心に耳を傾けるようになっていた。
麻紀は中田店長に尋ねた。
「ところで、中田店長のお店があるショッピングモールは、POP（店頭広告）を付けたらダメというルールはありますか？」
「POPはだめという規定はないはずです」
「それではせっかく商品のことをアピールできるのですから、POPを設置してみたらいいですよ」
麻紀は、大谷マネジャーから教わったPOPの作り方の概要や、設置した後のメリットなどを話した。
「皆さんも一緒に考えてみましょう。まず今回売りたい商品である、今シーズン扱うトレンチコートに関する情報を確認します」そう言いながらホワイトボードに情報を書き進めた。
トレンチコートは毎年人気があり、大きくデザインは変わらないが、丈の長さと機能に新しさが加わった。丈の長さはショート丈、膝丈、膝下丈の三つを揃えた。表地には「テフロン」加工を施し、撥水（はっすい）性と防汚性を強化。汚れが目立たないので安心して着られる。表地は綿100％の2本の糸を撚り合わせた糸で、太さを均一にした双糸使いにこだわっている。裏にはタータンチェックのライナーが付いており、取り外しが可能。ライナーはポリエステルで暖かい。ライナーを外せばスプリングコートとして春にも使える。価格は3万9000円、4万9000円、5万9000円。
麻紀は皆と話しながら、これらの情報の中から伝えたいことを整理した。（表1）
この表を下に、メーン通路を歩くお客様にまず何を伝えるか、タイトルと記載文を考える。メイン通路を歩きながら少し離れた距離から目にした人には、トレンチコートという品名と丈のバリエーション、そしてワンピースとコーディネートしやすい丈のコートもあることを知らせようということになった。（表2、POP上）
次に、興味を持って立ち止まってくれた人に異なる情報を伝える。立ち止まった人に伝えたいことは、撥水性と防汚性を強化して汚れが目立たないこととライナー付きであること、そして価格にした。（表3、POP下）
ここまで作ってみて中田店長も他の店長たちも、POPの作り方の理解が深まったようだ。
一段落したところで、麻紀は思いついた。
「丈の違いを瞬時に伝えたかったら、ワンピースに合わせやすい丈ということをアピールするのは次の機会にして、ボディー三体のVPで三つの丈違いを見せるという手もありますね。ワンピースとスカートは丈によってコートとの相性があるから、3体とも同じパンツにして丈の違いを際立たせてみてもいいかもしれません」
瞳が答える。
「ボディー3体を置くスペースがあるのなら、それもいいわね。VPは一番見てもらえるところだから、そこで見せるのが一番伝わるからね」
ボディのボトムをパンツで揃え、コートの丈違いを強調
瞳は、麻紀や、麻紀に教わっている真剣な皆の様子を見て感慨深げだ。
「あの子が新人のころは一人じゃ何もできなくて、ボディーに着せる服もちぐはぐだったのに、今では一人前に店づくりができるようになるなんて…」
そう思いながら、ルクリアはこれからも進化を続け、お客様に支持されるお店になっていくだろうと確信した。
（おわり）
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新人店長麻紀のVMDパワーアップ物語、いかがでしたか？最後まで読んでくださってありがとうございました！VMDは感性やセンスよりも、伝えたい情報を分かりやすく整理して組み立てるというイメージでしたね。
さあ、次の主役はあなたです。小説で学んだ知識を生かして、お客を引き付けるVMDを取り入れてみてください。
※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
（繊研新聞2014/8/4付の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています）
