《ファッションビジネス新・成長の条件④》サステイナビリティー 環境や人権への配慮は基本
ザラは昨年、東京・六本木の期間限定店で「ジョインライフ・エキシビジョン」を開催した。環境に配慮して生産した商品を販売し、それらに使った素材も展示した。サステイナビリティー(持続可能性)に関する取り組みの詳細を店頭で消費者に直接訴求したのは、同社にとって世界で初めての試みだ。
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持続可能な仕組み
オーガニック繊維や再生繊維の利用、サプライチェーン全般で水や電力の消費を抑える取り組みをザラは「ジョインライフ」と呼び、15年からはそうして生産した商品に専用のタグを付けて販売している。全商品に占めるジョインライフ商品の割合は16年で4%、17年で8%まで高まった。
ファーストリテイリングは、ジーンズの加工工程での水の使用量を最大99%削減する技術を開発し、18年秋冬から導入した。19年は「ユニクロ」「Jブランド」でグループの全生産量の3分の1に当たる1000万本のジーンズに同技術を使い、20年までにグループ全ブランドに導入を広げるという。
H&Mは、90年代後半からオーガニックコットンの使用を皮切りに、持続可能な素材の使用を増やす取り組みを強化し始めた。今年3月には、グループの使う素材の57%がリサイクルか、持続可能な条件で生産された素材に切り替わったと発表しており、30年までにはこれを100%に引き上げる考えだ。
グローバル大手小売りがこうした活動に力を入れる理由の一つは、人口増加に伴い、資源が枯渇することへの懸念だ。H&Mは17年のレポートで、50年に世界人口が98億人まで増加すれば、服は現在の3倍の1億6000万トンが必要になり、それは地球2.3個分の資源に相当するとしている。
選ばれるために
環境への負荷軽減だけでない。13年にバングラデシュ・ダッカで起きた「ラナ・プラザ」倒壊は多くの犠牲者を出し、消費者が自ら買う商品がどこでどうやって作られるのか、関心を寄せるきっかけともなった。グローバルに広がるサプライチェーン全体を人権や労働問題の観点からも透明化する必要がある。
15年の国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことを契機に、サステイナビリティーは企業にとって、重要な意味を持つ概念として浸透した。SAC(サステイナブル・アパレル連合)など問題解決に取り組む団体に参加する動きもあるが、日本からの参加はまだ大手にとどまる。
グローバル大手小売りは、デザインや品質、価格だけでなく、資源を浪費せず、作り手に不当な労働を強いずに商品を作っていることを様々な工夫で消費者に伝えようとしている。それは、市場で選ばれ続けるには、規模を問わずサステイナビリティーへの取り組みが不可欠ということを意味する。

(繊研新聞本紙19年4月1日付)