ゴーストタウン化したソーホー ウィンドーに板打ち付け、商品撤去の店も

2020/03/24 06:30 更新


 【ニューヨーク=杉本佳子通信員】ニューヨークでは、22日夜8時以降、不要不急の外出は避けて自宅待機を求める行政命令が出た。これに伴い、「重要とみなされないビジネス」は100%自宅勤務が義務付けられ、違反者には罰金が科せられる。ヘアサロンやネイルサロンは、「ソーシャル・ディスタンシング」(感染を避けるために人と距離を置くこと。1.8メートル強空けることが求められている)が実行できないため、21日夜8時以降強制的に休業させられた。

【関連記事】【新型コロナウイルス情報】ニューヨークの今

 ニューヨークのクオモ州知事は、州民の40~80%が新型コロナウイルスに感染すると予想している。人口の密集した都市部ほど感染者が多いため、いずれマンハッタンでは感染していない人の方が少なくなるかもしれない。医療従事者が使うマスクの不足から、クオモ知事はニューヨークのアパレル業界にマスクと医療従事者用ガウンの生産を要望。合同展や全米小売業大会が開催されてきたジェイコブジャビッツコンベンションセンターには、野外病院の設置が検討されている。クオモ知事は、終息には数カ月かかるとみている。

■運営を一時休止

 ファッションは「重要なビジネス」とみなされていない。ニューヨークに限らず、オンラインストアもヴィクトリアズシークレット含め、運営を一時休止するブランドが出てきた。

 先週半ば、閉店中のファッション関係の店やハドソンヤードで警備員の姿が見られたが、その後様相が変わってきた。ソーホーのルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディ、グッチはウィンドーを板で覆っている。クロエ、バーバリー、トゥミ、アベイシングエイプ、パドカレは、売り場から商品を全て撤去した。ウィンドーにいつも通り商品をディスプレーしたままの店も多いが、大量の失業者が既に出ている状況では、ゴーストタウン化したエリアで犯罪が起きる恐れはあるだろう。

ウィンドーを板で覆ったルイ・ヴィトン
ディオール
グッチ

■癒やされるものを

 ニューヨークのジュエリーブランド「サトミ・カワキタ・ジュエリー」の創業者兼デザイナーの川喜多里美さんは、パートタイムを含め14人の従業員を抱える。自宅待機開始前に、全員でほぼ全ての個人のオーダーを完成して出荷した。お客からは、「こんな状況の中で完成させてくれてありがとう。ジュエリーが届いて気分が上がった」というメッセージが届いたという。

 一方で、アメリカやロンドンにある取引先店は次々閉店。オンラインでセールを始めたが、22日夜8時以降は川喜多さんも出勤できなくなったため、この週末中に機材を自宅に移し、自宅でできるだけ生産を継続できるようにした。いつも頼んでいるニューヨークの鋳造屋は閉まってしまったので、他州または日本で鋳造作業ができるところを探っている。川喜多さんは、「ジュエリーなんてなくても生活には困らないし、人の生死には関係ないもの。けれど、こんな時にこそ少しでも気持ちが癒やされるものがあったほうがいい。皆それどころではないかもしれない。でも、自分は自分にできることをやるしかない」と語っている。

人通りの少ないブロードウェー

関連キーワード新型コロナウイルス情報



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事