ダウンジャケット、寝袋製造のナンガ 国産ダウンで唯一無二のポジションへ

2021/11/15 06:30 更新


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 ナンガ(滋賀県米原市、横田智之社長)は、国内でも希少なダウンウェアを製造する工場。祖業はふとん製造だが、先代社長の時代に寝袋に転換し、さらに横田社長が入社後の02年にダウンジャケットに進出、今では寝袋とダウンジャケットを軸にしたファクトリーブランドとして広く認知される。手掛けたアイテムはダウン・中わた製品という共通点はあるが「どれも似て非なるもの。ゼロから縫製ノウハウを積み上げてここまできた」(横田社長)。ブランド価値を上げながらハイスペックを追求し、進化を続ける。

 日本百名山の一つで、堂々とした山容の伊吹山を真ん前に望む地にナンガ本社工場はある。伊吹山は古くはヤマトタケルの伝説で知られ、今は登山、パラグライダー、スキーといったアウトドアアクティビティーのフィールドでもある。

 この地で生まれた「ナンガ」のダウンジャケットはセレクトショップとのダブルネームで毎シーズン引っ張りだこ。そもそも国内でダウンウェアを製造できる工場は少ないが、年々その知名度を上げ、“国産ダウンと言えばナンガ”と言われるほど唯一無二の存在になった。

価値高めて難易度も

 本社工場では50人近い縫製スタッフがダウンジャケット、寝袋を製造し、それ以外に外注工場も活用する。縫製ラインはダウンジャケットの量産2班とサンプル1班、寝袋のサンプル・量産を兼ねた1班の計4班体制だ。これに前工程の裁断、後工程のダウン封入のチームワークで完成させる。

技術に磨きをかけ、チームワークで小回りを利かせる

 ダウンジャケットの場合、新作に取り掛かる際にはサンプル班で仕様と工程を検討し、3回ほど試作を繰り返して修正したプロセスを量産班に託す。量産班ではまずは1着完成させてメンバー同士で工程を理解し、「裏地作業」「表地作業」、表裏を縫い合わせる「仕上げ」の3工程で手分けする。量産B班14人を束ねるチームリーダーはベトナム出身で来日5年目のレティ・ガーさん。外国人技能実習生や日本人の別なく、能力に応じて登用する仕組みを整え、モチベーション向上につなげていている。

 この間、商品の引き合いが増すのに伴って人員を増やして生産能力を高め、さらに商品価値を上げながらブランドポジションも向上させている。手掛けるアイテムもここ数年でぐっと難しくなってきた。「ポケットの形が複雑になり、ファスナーの箇所が増えるなど凝ったデザインになっている。今年は初めてレザーのジャケットも縫った」とサンプル担当の村上正恵チームリーダー。ミシンがけの際に生地が滑りにくく、慣れない素材に苦労したという。

 寝袋も同様だ。今年、極寒時にも耐える最高峰ラインとして「レベル8」を発売したが、「縫製の難しさがこれまでと格段に違う」と杉山友衣チームリーダーは話す。ダウンを入れるキルト部が立体のボックス構造で、表裏を帯状のメッシュ素材でつないでマチを作る。さらに背面は防寒のためにダウンが左右にずれないようタテ型キルト形状で、縫製は複雑だ。

 直線縫いの多い寝袋は、従来なら1点あたり1時間半~3時間半で仕上がるが、レベル8はサンプル時に5時間がかり。量産でスピードを上げているが、それでも4時間半近くかかる。企画サイドの高い要求に応え、現場のレベルアップを図る日々だ。

最高峰の寝袋「レベル8」。キルティング部にマチを付け、ボックス構造に

前身はふとん工場

 今は寝袋、ダウンジャケットをコアにしたファクトリーブランドとして全国にその名を知られるが、ダウンジャケットメーカーとしての歴史は意外に浅い。もともとは近江真綿を使ったふとん工場として前身をスタートし、大手の下請けを細々と手掛けてきた。しかし生産の海外移転が進んで工賃も年々低下、「このまま続けるべきか、転換すべきか」と思い悩んだ末に、横田社長の父で先代の横田晃氏の時期に寝袋縫製に乗り出した。

 大手アウトドアメーカーの下請けで寝袋の縫製を始め、それからOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーへ転換。現社長の智之氏が入社した01年にはすでに寝袋100%にシフトしていた。

 今のダウンジャケットメーカーのベースが出来るのは智之氏入社後のことだ。国内でダウンジャケットを縫える工場を探していたアパレルメーカーから声がかかったのがきっかけ。当時、寝袋の生産ピークは10月で、閑散期の6~9月を埋められると考え、「ダウンジャケットをやらせてほしい」と智之氏が先代社長に直訴した。

 しかし寝袋とダウンジャケットではパーツ数、縫製仕様、工程など全く違う。結局、慣れない仕事で納期遅れが生じ、赤字を出すことになった。「初期費用をかけないで縫製設備は転用できたが、生産ノウハウなんて持っていなかった。ふとんから寝袋を始めた時も、寝袋からダウンジャケットを始めた時もゼロからノウハウを積み上げた」

 一度は失敗したものの、万全の体制で再びダウンジャケットに挑み、下請け工場と一緒になって技術を開発。そこからは軌道に乗っていった。その後“基盤作り”と位置付けた苦労の時期を乗り越え、自社ブランドの認知向上へさらなる高みを目指す。

上質なスペイン産のダウンを使用する

《チェックポイント》チームで変化する要求にこたえる

「ナンガ」のオリジナル商品以外にも、有力ブランドとのダブルネーム・別注も多く、仕様の異なる商品を多品種生産する。ポケットやジッパーの有無だけでなく、表にキルトが出た定番の形、キルトを出さない上品な仕様、表裏ともキルトを隠すものなどさまざま。チームプレイで小回りを利かせ、変化する要求に応えていく。新作の寝袋「レベル8」の縫製も見せていただいたが、形状は非常に複雑で、極寒にも耐える商品作りの現場の苦労に脱帽した。

セレクトショップなどとのダブルネームでも引っ張りだこの「ナンガ」

《記者メモ》ブランド力の源泉

 「ナンガ」というブランドのコアは寝袋とダウンジャケット。寝袋はコアなアウトドアユーザーから信頼され、その信頼がファッション好きも魅了する。国産ダウンのブランド力の源泉はものづくりの現場にあった。

 横田智之社長が入社した01年当時は社員数14人の小さな工場だった。それが現在は110人。営業面でも生産面でも多くの苦労を乗り越えて今のナンガがある。

 17年からは米国で開催される見本市「アウトドアリテーラーショー」に出展し、グローバルブランドを目指して歩み始めた。Tシャツ、スウェットといったダウンウェア以外のアイテムもスタートし、海外生産も始めている。けれど原点は本社工場にあり続ける。

(中村恵生)

(繊研新聞本紙21年9月22日付)

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