このところテレビやSNSからのニュースに心を痛めることが多い。流す情報を幸せなものだけにしたらどうだろう。実際、そういう国があって犯罪率もとても低いと聞いたことがあるような…。
暗がりに裸の男
そんなことを考えていたら、旅で出会った世界の人たちを思い出した。(夫婦で旅好き、ただし安旅!)スペインのセビリアのバルでチビチビ注文していたら、料理人のおっちゃんが「そこのハポン(日本人)、金ねえのか」と聞いて来た。「ねえよ」と答えると(スペイン語はわからないがこういうことは伝わる)突然、肉の盛り合わせがドンと置かれ「これ食え、うめえぞ!」とおごってくれた。
フィレンツェではコインランドリーに入ると、店の奥の暗がりに裸の男が一人。「こっわっ」と思いつつ、洗濯しようとしたらその男が止める。なになに?とビビると、どうやら「その量ならこっちのマシンの方が安い」と、勧めてくれている模様。(もちろん、イタリア語もわからないが)この人、コインランドリーの番人? しかしなぜ裸?と思っていたら、勧めてくれた洗濯機が止まり、彼はそこから、下着、靴、洋服一式を取り出し、ササッと身に着け「さあ、どうぞ」と私にウィンクし、シャボンの匂いをさせながら颯爽(さっそう)と去っていったのである。めっちゃイケメン紳士となって!(確かにその洗濯機の方が安かった)
おばあちゃんの杖
イギリスのストラスフォード・アポン・エイボンでは安宿が見つからず、少しお高めB&Bで手を打ち、ぜいたくな食事も頂いて宿泊代を払おうとしたら、安い! 「だって安い部屋を探してらしたから」と、頼んでもいないのにまけてくれたオーナーさんのあの笑顔。ニューヨークのハーレムでは、信号無視の車ばかりで道を渡れず困っていたら、杖を突いていたおばあちゃんがその杖をバシッとかざし車を止め、我々に付き添って歩いてくれた――こういう親切、挙げだしたらキリがない。
昨年、コロナや互いの仕事の都合で行けていなかった旅へ久しぶりに出た。屋根裏的な狭~いパリのアパートメントに夫婦2人。寝袋持参。でも6階からの眺めは最高、おいしいバターをつけてかじるバケットは最高。チキンもつけると優雅な晩御飯となる。近所のパン屋さんとは懇意となり、帰国の日、お互いちょっと涙ぐんだ。言葉や人種なんて関係ない。面白さや優しさはあふれるほど世界に存在する。世の中捨てたもんじゃない、と改めて思う。そこをどう伝えていくのかが大切なのだ。
(役者&脚本家・山像かおり)
