教えて!旅のマイルール 海外出張に行き慣れたファッション業界人に聞く

2023/10/12 15:00 更新


 海外への買い付け、視察などが本格的に再開しています。久しぶりの出張で手続きや持ち物、現地での過ごし方について、忘れていたり、変化していたことがあるのではないでしょうか。そこで、普段から海外出張に行き慣れており、いち早く海外出張を再開した業界の方々に、それぞれの旅の〝マイルール〟について教えていただきました。

デザートスノー代表 鈴木道雄さん

レジ袋一つ、身軽に

鈴木さん

 古着の小売り・卸のデザートスノーの鈴木さんは長年、海外古着の買い付けに携わってきたベテランバイヤーだ。主な買い付け先はタイとパキスタン。気温が高い土地の倉庫でのピック作業は過酷だが、掘り出し物を見つけた時の喜びには代えがたいものがある。

古着の山からビンテージを探し出すのがだいご味

 コロナ禍が落ち着いて以降、買い付けのために毎月出張している鈴木さん。航空券はカード会社を通して確保し、効率化する。落ち着いてはきたものの、渡航制限解除以降はかなり値上がりしているという。

 現地にオフィスなどの拠点を設けているため、必要な物は用意してあり、持ち込む荷物は少なめ。レジ袋に貴重品だけを入れて飛行機に乗ることも多い。「ちゃんとしたバッグの方がスリなどに目を付けられ危険」という理由もある。

 出張中は朝から深夜まで倉庫にこもってピック作業に追われる。倉庫内は非常に暑く、服装は短パンとタンクトップがほとんどだ。ただ、パキスタンでは肌を出すことをあまり良しとしないので、外ではTシャツを着るという。

倉庫内で仲間との食事のひと時

 食事は、タイでは屋台のトムヤムクンなど、パキスタンではカレーがメインだ。「世界規模のチェーン店ですらおなかをこわすことも。薬は必ず携帯する」。衛生面での注意も必要。

 「大変なことも多いが古着の山からビンテージを見つけると舞い上がり、やる気が出る」と鈴木さん。「誰よりもたくさんの服に触れられるのがこの仕事の魅力」と胸を張る。

インターナショナルギャラリービームス・ディテクター兼バイヤー 片桐恵利佳さん

中心地よりローカルへ

片桐さん

 18年にバイヤーになった片桐さんは、パリ、ミラノを中心に欧州で買い付ける。「インターナショナルギャラリービームス」は、ラグジュアリーブランドだけでなく、作り手の背景やコンセプトに共感した新進のデザイナーブランドの品揃えが特徴だ。日本初のブランドを扱うこともある。21年秋ごろから海外出張を再開。「お客様には洋服を通じて新しい発見をしてほしい」と、現地ならではの情報収集に力を入れる。

デンマーク・コペンハーゲンでの一枚。忙しい日でも朝ご飯は必ず外で食べるのが片桐さんのこだわり

 パリでは友人に会い、地元住民が通うレストランやカフェに足を運ぶのがルーチンだ。「ザ・観光地ではない所が好き」な片桐さんは、北東部の19.20区に注目している。最近は移住者や若いアーティストのアトリエも多く、23~24年秋冬から扱うハンドメイドのニットブランド「エドナ」もそこで出会ったという。

 朝から晩まで展示会やショーを回るため、靴選びは重要だ。伊「フェランテ」のレザーのエスパドリーユを出張中のお供にすることが多い。柔らかい牛革のアッパーとラバーソールが軽い履き心地で、外履きだけでなく、飛行機内やホテルでも使っている。

出張の定番アイテム。ショーを見るときは「フェイン」に別注したバッグを愛用

 カメラが趣味で、仕事用のスナップ撮影や街歩きの時はいつも2台持ち歩いている。美しい町の景観から欧州の環境配慮への意識を学んだり、伝統建築やアート、食、音楽にも関心が高い。現地で得たファッション以外の世の中の流れを、提案する服や店作りに落とし込むように心掛けている。

「ショウタヒヤマ」デザイナー 日山翔太さん

現地の生活・文化味わう

日山さん

 渡航経験があるのはアジア、欧州、北米、中南米など13カ国。文化や価値観の違いを学び、視野を広げるための旅やワーキングホリデー、バイヤー時代の買い付けなど渡航目的は様々だ。最近では今年2月にコレクション発表で渡米した。

 現地では生地屋に行くようにしている。東南アジアの伝統的な柄や、ニューヨークのエネルギッシュでカラフルな生地など日本にはない「その国らしさ」があり参考になるという。

繊維街で購入したボタンや道具。ニューヨークでは「昔からピンクッションはトマトの形」と聞き、記念に購入した

 国立美術館やローカルなギャラリー、ナイトクラブなどには必ず行き、現地の人との交流を楽しむ。ブルックリンのはずれにあるクラブではメイクアップアーティストやフォトグラファーとの出会いがあった。

現地の人が通うナイトクラブでの出会い

 より現地の人と同じ生活を味わうため、2月のニューヨークではキッチン付きのマンションの一室を借り、スーパーやコインランドリーを利用した。シェアハウスなどローカルな滞在をしたい人には宿泊予約サイト「Airbnb」がお薦めという。

 現地の民芸品を購入して身に着けるのが日山さんのこだわり。プロフィールの写真の帽子は、メキシコシティの路上で手編みしていたおばあさんから購入した。

 2月はコレクション発表のためロケハンやリハーサルなど「ドタバタだった」が、メンバーとともに食事して過ごし「ショーの思いを伝えられる時間となった」という。「海外での出会いや体験を通して、心が豊かになっている」と振り返った。

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