美しいミュンヘンvsアングラなベルリン(宮沢香奈)

2018/05/03 12:00 更新


少し前の話になるが、メッセ会場で行われていたあるトレードショーの取材で訪れたミュンヘンが、同じドイツの都市であるのにあまりにもベルリンと違うことに驚いたのでそれについて語りたいと思う。

ドイツの南部のバイエルン州に位置するミュンヘンはドイツで3番目に大きい都市で、日本でも有名なオクトーバーフェストの本場であるなど観光地としても人気が高い。ベルリンからは飛行機で約1時間、ICE(日本でいう新幹線)で5時間弱ほど。今回はタイトなスケジュールのビジネストリップだったため飛行機を利用したが空港に着いた瞬間からそこには別世界が広がっていた。

ミュンヘン空港から駅へ向かうオートウォークのハイテクなミニマルデザイン

近未来を彷彿させるハイテクなデザインと設備、行き交う人々はスーツや上品な着こなしとリモアで颯爽と歩く。バックパッカーのような大きなリュックに履き込んだスニーカーが多いベルリンの空港では滅多に見られない光景である。

ドイツの首都なのにハブ空港がなく(10年以上経ってようやく着手)驚くほど小さくて何もないベルリンとは雲泥の差でどっちが首都か分からないほどである。さらに、ゴミ一つ落ちておらず、ビルの壁にはグラフィティーが一つもなく、中世の風情ある歴史的建築とモダン建築が入り混じった街の美しさにはさらに驚かされた。

トルコ人移民が少ないことからケバブ屋もほとんど見かけない上に、ベルリナー(ベルリン在住者のこと)特有のビール片手に歩いている人など一人もいない。

ベルリンがおかしいのか、ミュンヘンがおかしいのか混乱してしまったが、とある国際コンサルティング企業が今年発表した「生活の質が高い都市ランキング」でミュンヘンは世界3位にランクインしているいわば”富裕層の街”なのだ。電車やトラムなどの公共の乗り物はそれほど感じなかったが飲食店やホテルはパリ並みの高さと言える。家賃も同等に高いと聞く。

圧巻のネオゴシック、ミュンヘン新市庁舎


今でこそ都市化され、インターナショナルと言われるようになったベルリンだが、特有のゲットーな雰囲気は十分に残っており、西エリア以外はお世辞にもキレイとは言えないし富裕層の雰囲気もない。道端に捨てられたゴミが風に舞い、退廃的なビルの壁一面にはグラフィティー、70年、80年代を彷彿させるリアルパンクスを街中で見かけることも珍しくない。やはりこの街は特殊なのだと改めて実感した。

ミュンヘン中央駅の近くにホテルを取ったが観光する時間などなく夕食と散歩ぐらいしか出来なかったが有名な観光スポットの一つであるマリエン広場周辺のエレガントな雰囲気はとても好きだった。正直なところアンダーグラウンドカルチャーを感じない街には住みたいとは思わないが、たまに洗練された美しいものを見ることはとても大事なことであり、忘れてはいけない感覚だと思った。

これまでベルリンにしか興味がなかったが、機会があればドイツの他の都市にも是非訪れてみたいと思った。知らないだけでいろんな魅力に溢れているに違いない。

夜のライトアップも美しいレジデンツ劇場、ルネッサンス様式の建築が素晴らしい聖ミヒャエル教会



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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