「マウジー」“なとりか”さん パートでもトップ販売員として活躍 自身に合った働き方で輝く

2022/08/08 06:30 更新


 スタイリング提案やSNSでの情報発信など、これまでの店頭での接客以外の仕事が増えているショップスタッフ。足元商圏でのコミュニケーションから全国に向けての情報発信が増え、それに共感する顧客も多くなっており、客との接点となるスタッフの重要性が増している。以前より多忙となっているのは確かだが、「楽しみながら仕事ができている」など、モチベーションが上がっているという。環境が変わるなかで、仕事を楽しみながら、自身に合った働き方を大切にするスタッフを追った。

(古川伸広)

■オフィシャルスタッフとして

 バロックジャパンリミテッドの「マウジー」ルミネ立川店スタッフの〝なとりか〟さんこと田中梨花さん。昨年、バニッシュ・スタンダードが初開催した画像投稿アプリ「スタッフスタート」の「スタッフオブザイヤー2021」で2位となった。

 高校生の時にアルバイトで働き始めて以来、マウジー一筋。出産を機に一時離れるが、1年後に再度パートとして復職、「マウジーが好きで、もっと広めていきたい」と11年目を迎える。田中さんが発信するスタイリングなどのファンは多く、新ショップオープンや他店のイベントにも出向き、ブランドを盛り上げている。

ファンが待ち望むSNSのスタイリング発信。購買や来店促進になっている

 会社からは「正社員にならないか」と打診されたこともあるが、一貫してパートで勤務している。給与形態や福利厚生などは正社員と違うが、「第一に子供と家庭の時間を大事にしたい」からだ。仕事は好きだが、正社員では子供がやりたいことをサポートできなくなることも大きな要因となっている。

 コロナ禍はショップの休業で賃金が発生しないなど、パートの現実を感じ、「正社員になりたい」と悩んだ時期もあった。しかし、「上司も含めて、正社員やパートだからと関係なく、正当な評価をしてくれる」ことで、「これからもパートとして頑張ろう」と、家庭第一を貫いている。

 現在のオフィシャルスタッフは4人で、パートは田中さん1人だけ。最も長い期間、その仕事を担ってきた。店頭をメインにしながらもSNSなどの情報発信や毎週木曜日夜のインスタライブ出演、顧客との交流など幅広く活動している。

 田中さんが多様な仕事、働き方ができるのは周りのサポートと理解、環境の変化も大きい。

 以前はイベントや収録が終わると急いで店に戻り、接客をしていた。店舗ごとの売り上げがより重視される時代だったので、1人が抜けると戦力ダウンになったからだ。

 今はショップとECの両軸を重要視する方針となり、環境も変わってきた。顧客との接点であるリアル店舗を大事にしながら「楽しみながら仕事ができている。時代に合った働き方になっている」と実感している。

「目が大きくてあいさつしてくれる子」として覚えてもらうことが多い田中さん
人気のデニムなど多様なアイテムが揃う「マウジー」ルミネ立川店

■自然体で客を引き付ける

 マウジーのトップ・オブ・トップを担う田中さんは自然体で客と接している。スタッフになって続けていることは、来店時に「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と話しかけること。あいさつを通して、ただ商品を見たい人か、話しかけても良いかを瞬時に判断し、アプローチを考えている。

 あいさつが仲良くなるきっかけにもなっており、クレームを受けてもめげずにあいさつを続けて仲良くなった顧客もいる。私生活でも「まずはあいさつ」は変わらない。

 また、「目からの記憶力がいい」ことも武器。10年前の顧客の購入商品も覚えている。何も買わずに帰った客でも、触っていた商品を覚えていて、次回来た時に「この前、気になっていましたね」など話しかけるとびっくりされるという。

 意見もしっかり伝える。「この前、似たようなものを買ってませんでしたか」と声を掛け、違う商品を薦めたり、似合うか似合わないかをはっきり伝えたり。目先の売り上げは考えずに客との信頼関係を築くことを大切にしている。客からは「はっきり言ってくれるから、買って後悔することはない」と言われることも多いそうだ。

似合うか似合わないかをはっきり伝え、信頼関係を築いている

■楽しみながら魅力を伝える

 インスタライブは普段会えない顧客とも会えるため楽しみにしている。基本は自分が気に入った商品を紹介する。その中でリアルショップとは違って、売り上げも意識している。ただ、客もオンライン販売に慣れており、「買わせよう」との思いが強いと伝わってしまうため、楽しい雰囲気を意識している。

 商品の良さや素材感を伝えるために、生地を寄せたり、伸ばしたり、少し擦って音を出すなど工夫している。軽さを伝えるときは、小指で持つようにしている。また、商品のどこが好きかを届けるキャッチコピーやワードを伝えている。例えば、白のレース使いワンピースでは〝いい女ワンピース〟や着回せる〝なんでもワンピース〟など。親近感から田中さんのワードに注目する顧客も多い。

 インスタライブでの伝え方に苦戦している後輩には助言する。スタッフスタートのコツや売り上げの作り方など自身のやり方を話すが、「合う合わないがあり、自分に合ったところを取り入れて欲しい」。「スタッフオブザイヤー2022」が始まっているが、田中さんはエントリーしていない。「もっとマウジーを広めていくために、自分より活躍する後輩も作りたい」という。

多様な情報発信で共感する顧客も多い

■全体でお互いをサポート

 佐藤未優マウジーPRマネージャーの話

 ブランド全体でお互いにサポートする雰囲気があり、勤務時間の調整や長期休暇など働きやすい環境を整えるように努めています。実際、田中さんは2カ月休暇を取ったこともあります。企業全体やマウジーはSNSの活用に注力しており、働き方は人それぞれになってきているため、家に居てもインスタなどで情報発信ができ、来店促進やネット売り上げに貢献できます。

 田中さんの肩書は、ショップスタッフ兼マウジーのブランドPRを担うオフィシャルスタッフ。オフィシャルスタッフとは、私たちができない現場感覚や顧客とのつながりを生かしたPR活動を担当するトップ・オブ・トップの集まりです。トップ集団の下にはブランドのインスタグラマー3人が控え、上を目指しています。

(繊研新聞本紙22年7月1日付)

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