■6月開催のITMAで世界に発信、新型機やソリューションを提案
インクジェットプリンターを製造販売するミマキエンジニアリングは、6月に伊ミラノで開かれるITMA(国際繊維機械見本市)に出展する。〝サステイナビリティー&サーキュラリティー〟をテーマに、水の使用量を限りなく減らし、サステナブルなテキスタイル産業を提案する。池田和明社長にその狙いや、同社が考えるアパレル業界に対する貢献について聞いた。
■生産性・当社最速の昇華転写プリンターで、アナログ捺染市場のDX化を推進
今回のITMAでは、新しい機種やソリューションをいくつか発表します。一つは高速昇華転写プリンター「Tiger600-1800TS」で、当社Tigerシリーズの後継機になります。2015年に買収した伊ラ・メカニカが初代Tigerを開発しましたが、今回はミマキの開発チームがイチから手掛け、ボディは省スペース化を図りつつ高速・安定・低コストを実現しました。
ランニングコストに直結する1平方メートル=39グラムの薄い転写紙にも対応し、最速モードの550平方メートル毎時はファッションアパレル用途で十分に実用可能なプリント品質を得られます。これまで市場にあった高速昇華転写プリンターは生地プリント用を改造したものがほとんどで、生地搬送のための機構が高コストの要因になっていました。これを転写紙専用設計とすることによって最速クラスで本体コストを大きく下げられました。
■顔料転写であらゆる素材にプリントできる新システム
もう一つは、あらゆる素材に対応する顔料転写の新システムです。特殊なコーティングを施した顔料転写紙を使い、bluesign®APPROVED取得予定の専用インクを開発しました。これに当社の既存エントリープリンターを組み合わせ、紙にプリントした柄を昇華転写では出来なかった綿、混紡素材などに転写可能になります。転写には圧力が必要で、対応する転写機を伊モンティアントニオなどがITMA会場で披露する予定です。
■「ネオクロマトプロセス」で生地の脱色による「再利用循環」を提案
また技術展示として、昇華転写プリントを脱色・除去する「ネオクロマトプロセス」も提案します。ポリエステル生地に昇華転写された柄の上に専用液を塗布し、吸収布を重ねて熱をかけると脱色されるという仕組みです。ゆくゆくはこれをシステムとして自動化にしたいと考えています。
■消費地近くで簡単に導入、未来に向けて新しいモデルを
今回当社はサステイナビリティー(持続可能性)とサーキュラリティー(循環性)にテーマを掲げ、染料インクなど前後工程に水を使うプロセスを出しません。この十年ほどITMAではアナログからデジタルへの転換を目指し、スピードを追い求めた開発が行われてきました。しかし今はデジタルでいかにサステイナブルな物作りができるか、これまでとは異なるステージに移っていると感じています。サステイナブルには色んな切り口がありますが、まずは物を作る際の環境負荷を下げ、アパレルの作り過ぎも抑えていきたい
そしてそれがいかに簡単なプロセスで出来るかが大事だと考えます。消費地に近い場所でなおかつオンデマンドで生産する仕組みが注目されていますが、その点では水をほぼ使わず簡単であることは重要です。当社のプリンターは最も安い物で100万円ぐらいからありますし、個人デザイナーがTシャツプリンター1台でブランドを始めたように手軽に導入してもらえます。
先進国はどこも人手不足ですし、それを考えると安さだけで勝負するのは無理がある。デジタルをうまく活用し、クリエイティビティーで価格とは違う付加価値を出す方に向かわざるを得ません。アナログからデジタルへの転換が重要と思われがちですが、デジタルによってビジネスモデルが変化したり、未来に向けて新しいビジネスモデルを作っていくことが大事なんだろうと思います。実際、当社のUV(紫外線硬化インク)プリンターで現在最大のお客さんは、マンションでプリンター1台から始められたアクリルキーホルダーメーカーです。
最近、東京・大崎にJPデモセンターを移転・拡張しました。ここでプリンターを見てもらうだけでなく、アームロボットなどによる自動化や省人化の提案もしていきます。我々としてもプリンターを買ってもらったお客さんに儲けてもらう必要があります。人手不足の日本で自動化・省人化をお手伝いし、消費地近くでのビジネスを成功してもらいたいと思います。
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株式会社ミマキエンジニアリング
企画・制作=繊研新聞社業務局