ミラノサローネ2018 増えるファッションブランド

2018/05/15 04:30 更新


 4月17~22日、伊・ミラノでデザインイベント「ミラノ・デザインウィーク」(通称ミラノサローネ)が開かれた。見本市会場で開かれるBtoB(企業間取引)向けの「ミラノサローネ国際家具見本市」と市内で開かれる「フォーリサローネ」の総称で、期間中、街はデザイン一色に。世界中からインテリアやファッションなど幅広い分野のバイヤーやクリエイター、そしてデザインファンが訪れた。

(村上洋一)

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 インテリアやプロダクトが中心のイベントだが、近年は特にファッションブランドの参加が増え、多くのデザインファンが長い列を作る。ライフスタイル提案を強めるファッションブランドにとってミラノサローネでのプレゼンテーションは重要度を増す。見本市会場への出展はビジネスだが、市内での商品展示やインスタレーションは単なる販促ではない。

 デザインをキーワードに、ブランドの思想や物作りの姿勢をアピールし、ブランディングを進める場だ。ファッションマニアだけでなく、幅広い層にブランドの認知度、理解度を深めてもらうことが新たなファン作りにつながる。

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ルイ・ヴィトン

 ルイ・ヴィトンはインテリアオブジェの新コレクション「ルイ・ヴィトン レ・プティ・ノマド」を発表した。マルセル・ワンダース(オランダ)やパトリシア・ウルキオラ(イタリア)など、世界の第一線で活躍するデザイナーを起用。レザーを素材にしたクッションやミラーなど、デザイナーの独創的な発想と匠の技が融合してラグジュアリーなインテリアアイテムに仕上げた。

 ルイ・ヴィトン・ノマドは12年にスタート。旅をコンセプトに有力デザイナーを起用し、ソファやスツール、照明からハンモックなどを販売している。日本からは吉岡徳仁と佐藤オオキ(ネンド)が参加している。

ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトン

エルメス

 エルメスのホームコレクションは上質な素材にこだわり、優れた職人の技術によって手作りされた温かさを十分に感じさせる。会場に七つの空間を設けて、デザインやテイストごとにテーブルウェアやファブリック、家具や小物などをコーディネートして展示した。

 ファブリックはカシミヤやメリノウール、シルクやコットンで、自然や幾何学模様をデザインした。テーブルウェアや小物はカラフルな植物モチーフが特徴だ。一方、レザーのトレーやウッドの家具はシンプルなデザイン。ファブリックやテーブルウェア、小物のカラフルで素朴なデザインとレザーやウッドのマットなテイストがマッチしている。

エルメス
エルメス

フェンディカーサ

 フェンディカーサは30周年を迎えた。今回はフランスの建築家、ティエリー・ルメールのデザインによる新カプセルコレクションを発表した。ソファとランプ、テーブルなどで、「イタリアンスタイルとフランスのデコラティブアートを統合」し、上質でエレガントな空間を演出する。

 また、新たにキッチンの「フェンディクッチーナ」の2アイテムも発表。伊キッチンメーカーSCICとの協業で開発した。

フェンディカーサ
フェンディカーサ

ディーゼルリビング

 ディーゼルリビングの特徴はビンテージ感。家具のモローゾ、照明のフォスカリーニ、キッチンのスカボリーニなどイタリアを代表するインテリア企業との協業で室内空間をトータルにコーディネートできる。今回は見本市会場のほか、市内2カ所でも商品を展示した。

 新作のイメージはメキシコ。「アウト・オブ・ワールド 」をコンセプトにメキシコの砂漠の街からインスピレーションを受けたアイテムを発表した。見本市会場ではホテル空間をイメージしたインテリアのほか、初めてバーのしつらえを提案する「Garage Bar」も発表。メキシコの色彩とコンクリートの質感が砂漠の地平線に浮かぶ太陽をイメージさせる。

ディーゼルリビング
ディーゼルリビング

エトロ

 エトロは「旅」をテーマにした「ノマドストーリー」シリーズ。インドや西アジアをモチーフにデザインした。新作アームチェアの「バベル」は、エトロのシンボリックなペイズリー柄を巧みに表現したのが特徴で、トランクの上にチェアが乗っているフォルム。チェア部分は旅に持ち運ぶ折り畳み椅子のイメージだ。ソファやクッションなどもエトロらしい色使いで個性的なデザインに仕上げた。

エトロ
エトロ

ロエベ

 ロエベは「伝統と近代をつなぐ工房、さまざまな織物技術を持つ職人にフォーカス」し、インドの手縫いリボン刺繍や日本のしじら織りや手染めのシルク、アフリカのパッチワークなど、世界各地で受け継がれている織物や刺繍、染色技術で製作したブランケットやタペストリー、トートバッグのコレクションを発表した。

 地域性を感じさせる素材やデザインを今の時代にフィットさせる商品を目指したもので、トートバッグは期間中、ミラノ店で販売した。また、ミラノサローネでの利益は「中南米やアフリカで女性教育促進に取り組んでいる慈善団体や世界の伝統工芸に寄付する」という。

ロエベ
ロエベ

-トピックス-

◆鏡をつなぎ無限の空間

 コスはアメリカ人アーティストのフィリップ・ケー・スミスを起用し、16世紀に建造された建物の中庭で大規模なインスタレーション「OPEN SKY」を開いた。扇形にカットした大型の鏡を半円型につなぎ合わせ、空と地面の境界をなくして無限の空間を作り出そうというものだ。

 来場者が真正面から見ることができるように配置された鏡によって、建造物とミラノの美しい空をシームレスに映し出した。コスがミラノサローネでインスタレーションを開くのは今年で7回目。毎年多くの来場者を集めている。

コス

◆1000本限定でサングラス

 マックスマーラとサフィロ・グループはミラノサローネ期間中、1000本限定で発売する新たなサングラス「ラヴァプリズム」を発表した。

 両社と国際的アーティストとの協業開発商品の第3弾で、今回はカーティン・ブラッシュとユナイテッド・ブラザーズ(荒川智雄と荒川医(えい)兄弟)がデザインを担当。火山の溶岩とマグマをイメージした、リムのないオーバーサイズのレンズ、その光を放つ上部のシルバーと下部のソリッドなグレーのコントラストが特徴。独創的でフラットフォルムがシャープな印象を持たせる。

マックスマーラ

◆ファッション、デザインの対話

 ヴァレンティノはモンテナポレオーネ通りのショップで、「ファッションとデザイン、過去と現在の対話」をテーマにした「ニーナ・シェ・プロジェクト」を開いた。インテリアのニルファー・ギャラリー創設者、ニーナ・ヤシャールと協業し、店内の五つの空間をニーナ氏のコレクションピースとヴァレンティノのクリエイションを組み合わせて作り上げた。

 新しいクリエイションに向けた取り組みで、クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは「伝統的なファッションとデザインという価値の対話を模索した」としている。

ヴァレンティノ

◆テキスタイルの魅力十分に

 「これまで開発してきたテキスタイルのアーカイブを組み合わせたクッションのインスタレーション」と、ミナ・ペルホネンの皆川明は数種類のテキスタイルをつなぎ合わせて、ぬいぐるみとも思える個性的な形状のクッションで空間を演出した。

 壁面はカット前のテキスタイルで装飾し、クッションはソファやテーブル、または天井からつり下げて展示。テキスタイルのデザインやカラーを楽しみ、素材を手に触れて感じる空間に仕上げた。皆川はイタリアの陶磁器、リチャード・ジノリにデザインを提供し、海外のテキスタイルメーカーのインスタレーションなどを担当してきたが、個展は今回が初めて。

ミナ・ペルホネン


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