メトロポリタン美術館できものスタイル展

2022/06/20 11:00 更新


 ニューヨークのメトロポリタン美術館で「きものスタイル:ジョン・C・ウェバー・コレクション展」が始まった。日本と西洋の芸術的対話に焦点を当て、きものが世界中に与え続けている影響を検証した。収集家のジョン・C・ウェバー氏による寄贈及び貸し出しされたきものを中心に、男性用と子供用を含む60点以上のきものを西洋のクチュール、日本絵画、浮世絵、工芸品と共に展示している。

 時代は18世紀以降で、古いきものと工芸品は能用のもの及び江戸時代のものが多い。女性消防士が着用したきものとヘルメットのセットは珍しい。男性は大奥に入れないため、女性消防士が大奥にいる女性を火事から救出する際に着用したものだ。商人がお金をかけて派手なきものをつくった一方、上流階級の女性たちが着たきものは保守的だった対比も見せる。庶民には綿が高価だった時代につくられた、藤の皮の繊維を採取して糸にして織ったきものもある。大正時代の男性用長じゅばんは、背中に大きなクモの柄が大胆に描かれたもの。能や歌舞伎の「土蜘蛛」の影響を受けたのかもしれないとされている。銘仙きものは「既製服」として、銀座三越で売られた当時を再現した設定で展示された。ポルカドットやアールデコ調の柄をのせたきものなど、西洋の影響を受けた柄のきものも興味深い。

 西洋への影響は、Tシェイプやベーシックな構造、直線断ちのアイデアを取り入れた服が中心だ。ポール・ポワレの1919年のコート、ジョン・ガリアーノがメゾン・マルジェラのクリエイティブディレクターをしていた時に発表した帯のようなディテールを背中に入れたドレス、和風の柄を入れたトム・ブラウンのスーツなどがある。多くの染織品は10月に展示替えされ、23年2月20日まで開催される。

ポルカドットのきもの(The Metropolitan Museum of Art, photo by Paul Lachenauer)

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)



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