《めてみみ》トップの味方

2025/10/01 06:24 更新NEW!


 千葉県鎌ケ谷市前市長の清水聖士氏が書いた『市長たじたじ日記』が面白い。大手商社、外務省を経て02年、前市長逮捕により行われた市長選挙に落下傘候補として出馬し、わずか数百票差の激戦を制して市長に就任。以来、5期19年にわたって同市市長を務めた。

 職員の不祥事に肝を冷やし、議会対応に心を砕き、災害が起きれば役所にとどまり、会合やお祭り、葬儀にはできる限り参加する。たえず次の選挙を気にして、情勢分析にいそしむ…。清水氏は既に政治家を引退しているからだろう。有権者や政界に忖度(そんたく)なく、実体験をきれいごと抜きに書いている。市長といっても等身大の人間が携わっていることがよく伝わり、とっつきにくいイメージのある地方政治が身近に感じられた。

 興味深いのは役所内に相談相手を作るエピソード。落下傘候補だったため市役所の中に心許せる人物がいなかった清水氏は、切れ者だが直言居士のために長年課長職に留め置かれていた人物に注目。他の職員がやっかまないよう少しずつ昇格させ、最終的に側近となる副市長に引き上げた。

 「トップは孤独なもの」。多くの社長経験者がこう語るように、様々な決断を一人で下す組織の長はプレッシャーが大きい。だからこそ身内や社外に味方を見つけ、時には頼ることも必要だ。もちろん、受け売りとなるのは避けたいが。



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