大丸松坂屋百貨店は4月、大丸東京店10階にアート、ホビー、カルチャーの3領域を編集したゾーンを新設した。従来の扱い商品の枠を超え、顧客の「好き」や「推し」に着目した。モノだけでなく、ワークショップなど体験型イベントを組み合わせた日本発のコンテンツが充実する。
コロナ禍を経て消費が大きく変化した。野村総合研究所の調査によると「節約するものとお金をかけるものを分けている」という回答者の比率は68%(複数回答)に達し、「とにかく安くて経済的なものを買う」という人は28%にとどまった。メリハリ消費が台頭している。
コストパフォーマンスの対極にあるのがエモーショナルだろう。「理屈で説明できないが、自分の好きなモノやコトに金や時間を惜しまない」購買行動は〝エモ消費〟といえる。ポイントは自分の好き。他人が無関心でも自分が少数派でも関係ない。エモ消費がネットワーク型のコミュニティーとなることも見逃せない。
新ゾーンは一人ひとりの好きが原動力となる新しい市場を創造し、国内客に加え訪日客の需要を取り込む狙い。好きをマッチングするプラットフォームは新たな事業モデルとなる。オープン記念で登場したドジャース大谷翔平選手が試合で着た直筆サイン入りユニフォーム(税込み1億円)が、抽選で落札されたのは象徴的だった。