《めてみみ》ミドルプライス狙い

2024/12/16 06:24 更新


 富裕層のインバウンド需要や外商顧客の獲得に力が入る都心百貨店では、商品単価が大幅に上昇している。紳士服フロアを見ると海外ブランドはもちろん、国内ブランドでもスーツの価格帯は10万円以上が主力になった。少し前まで6万~8万円台のミドルプライスを支持していた大人の男性が買う場は、百貨店から失われつつある。

 ここ数年の円安や原料高の影響で大幅に値上がりした。低価格帯を強みにしてきた大手紳士服専門店でもスーツの平均単価は上昇傾向にある。24年4~9月の平均単価は、青山商事単体で3万3790円(前年同期比6.7%増)、AOKI3万600円(4.4%増)だった。

 大手紳士服専門店にとって6万~10万円はまだまだ高価格帯。だが、百貨店販路で空白になったこの価格帯にチャンスがあるとみる。AOKIでは主力業態の銀座本店でオーダースーツコーナーを今秋にリニューアルした。インバウンドや富裕層の拡大、体験型消費を求めるなど市場の変化が背景にある。「洋服の青山」でも来春夏に高級ブランド「ヒルトン」「サビルロウ」を強化する。

 スーツ需要全体が縮小傾向ではあるものの、ミドルプライス購入層を獲得するため、こうした市場の隙間を狙う価値はあるだろう。ただ、仕事着がカジュアル化する中、どこまで深追いするかは悩ましいところだ。



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