米国民は次の大統領にドナルド・トランプ氏を選んだ。同氏は全ての輸入品に10%か20%、中国製品には60%の関税を課すと表明している。そのまま実行するとは限らないが、貿易の大きな障壁になるのは間違いない。
世界一の衣料品市場でありながら手薄な米国市場を攻めようと、商社の拠点作りが目立っていた。スタイレム瀧定大阪はニューヨークで米国法人を立ち上げ、ヤギもオフィスを開設した。GSIクレオスは工業製品を軸に、広い米国市場を攻めようと拠点を拡大中。
ヤギの八木隆夫社長に「トランプ氏が大統領になると米国向け生地輸出は難しいのでは」と聞くと、「戦略に変更はないが、米国だけでなく、東南アジアでの拡大や欧州での拠点作りにも力を入れる」との答え。様々な地域や国にくさびを打ち、海外事業全体を引き上げる。伊藤忠商事の武内秀人執行役員繊維カンパニープレジデントは、「先進国で着実な人口増が見込まれる米国は非常に大事な市場」と積極的にビジネスを広げる考えだ。
物作りの面では米国向け中心に〝脱中国〟の動きが加速するだろう。その分、中国の生産スペースが空き、中国縫製の見直しもありそうだ。
次の4年間、何が起きても不思議ではない。どのような事態にも対応できる柔軟さと、それを可能にする周到な準備が何よりも大切になる。