《めてみみ》神主さんになりまして

2024/10/09 06:24 更新


 仕事の合間の雑談は楽しいものだ。海外旅行の失敗談で爆笑することも多い。雑談から貴重な海外市場の実情などを知ることもできる。先日の雑談では、「実は私、神主さんになりましてね」と切り出された。

 聞けば、地元に神社があり、祭りには近所の人々が大勢参加する。ただ、常駐の神主はおらず、祭事には、大きな神社から神主に来てもらうそうだ。費用も掛かる。地元への貢献の意味を込め、自分が神主の資格を取ろうと思い立った。本式の資格ではないが、それでも約1カ月近く講習に通ったそう。

 当人は地方のアパレルメーカーの経営者。規模は中堅だが、他社に先駆け、自社ブランドを軸にECを伸ばしてきた。こだわりの商品だけに国内だけでは限界があると見るや、海外市場拡大への布石も着実に打っている。CSR(企業の社会的責任)も不可欠と、こうした地域貢献のほか、無償の社外活動などにも積極的に取り組む。

 取材は、当人がちょうどベトナムから戻った時。同地に大きな被害をもたらした9月の台風が過ぎ去った直後である。為替が乱高下している時期と重なり、輸入・輸出の両面で懸念も絶えない。企業活動をしていく上で、思いもかけない難事が増えるばかり。「人事を尽くして天命を待つ」とはよく聞く言葉だが、苦労して取った資格は、神頼みする時にも役立ちそうだ。



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