都内では、デザイナーブランドの25年春夏シーズン展示会が佳境を迎えている。この時期、発表するのはメンズが中心。そこに、いくつかの新ブランドの案内も届く。長年、日本の有力ブランドでパタンナーを務めていたといった経歴に、どんな服を作るのかと期待が膨らむ。
デザイナーとしてブランドを立ち上げるのには、二つのケースがある。一つは学校を出たてのまっさらなまま。もう一つはどこかのブランドのデザインチームで経験を積んで独立するケースだ。どちらかと言えば後者のほうが多いだろうか。アレキサンダー・マックイーンは「ロメオ・ジリ」やサビル・ローで、マルタン・マルジェラは「ジャンポール・ゴルチエ」で経験を積んでいる。
以前、在籍していたブランドのイメージを持って展示会を見に行くと、肩透かしを食らうこともある。「在籍していたブランドでやったことはやりたくない」というデザイナーは多い。もっとも、在籍していたブランドとそっくりの服を見せられても困ってしまうものではある。
うれしいのは、オリジナルの感性の影に、前職の経験がしっかりと根を張っている場合だ。長年の経験で培った技術が土台となってデザインが花開く瞬間に立ち会えた時に、ファッションを見続けた者にとっての喜びがある。真夏の展示会で、そんな素敵な出会いを期待したい。