《めてみみ》商社の稼ぐ力

2024/07/18 06:24 更新


 外部環境が厳しい中でも、商社は〝稼ぐ力〟を着実に高めている。繊研新聞社が行った商社の23年度「繊維事業業績アンケート」の「単体繊維部門売上総利益」項目で、前年と比較可能な19社全てが22年度よりも売上総利益(額)を伸ばした。過去15年を振り返ってもこうした例はない。

 アパレルOEM(相手先ブランドによる生産)事業が上期は好調だったものの下期は暖冬で失速。急速な円安進行、重なるコスト高要因、中国、欧州市場の低迷など外部環境は決して良くはない。そうした中でも収益を高めることができたのは、やり方や進捗(しんちょく)は違えども「ぜい肉をそぎ、筋肉質な体(経営)に作り替えてきた」ためだ。

 「無理はせず、伸ばせるところで伸ばす」と低収益事業を縮小・撤退した分、成長が見込める分野に人材と資金を投入し、ポートフォリオを組み直す。コロナ禍で傷んだサプライチェーンも強化、分散した。何より「安売り競争が減った」と価格転嫁を進めた。数量が減っても単価を高め、収益幅を広げたことが大きい。製品までの一貫事業も寄与している。

 どれをとってもすぐに実現するものはない。あるべき姿を見定め、愚直に、しかし着実に進めた結果が数字に表れている。不確実な時代。この間高めてきた稼ぐ力の源泉は、決めたことをやりきる実行力にあるのではないだろうか。



この記事に関連する記事