《めてみみ》出店の考え方

2023/12/12 06:24 更新


 あるレディス専門店は、かつて「こんな役割の店が欲しい」と声を掛けてきた商業施設に出店した。狙い通りの客の来館は一定増えたが、オープンしていくらも経たないうちに「見込みより売れていない」とクレームを受けた。

 「コンセプトが違うというお叱りならいくらでも受ける。だけど館の都合で勝手に決められた皮算用など当社には関係ない」。以来、出店交渉の序盤で「出店したらどれくらいの売上高が見込めるか」ばかり気にする百貨店やSCへの出店は見合わせることにしている。

 別の専門店のトップは、商業施設から出店を打診されると、その理由が何なのか、先方の担当者にじっくり聞く。「当社を全然知らず、来館客へのアンケートで名前が多く挙がったという理由で、出店を持ちかけられると、店の屋号をフロアマップに載せたいだけなのかと思ってしまう」。

 逆に担当者から「ウチの店が好きだという気持ちが伝わってきて、当社が店づくりで大事にしていることを踏まえて施設内の場所を考えてくれているのがわかると、一緒に頑張ろうという気持ちになる」。

 2社とも商品やサービスの軸をぶらさず、顧客の期待に応え続けることでコロナ禍を乗り切った強い専門店だ。目先の売上高より客の満足を優先する点が共通している。出店に対する考え方からもそのことが見て取れる。



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