《めてみみ》秋は旅行気分で

2023/10/16 06:24 更新


 地元の織物産地を拠点に洋服と生活雑貨のブランドを発信し続ける企業がある。ブランド立ち上げ当初の20年ほど前は東京の合同展に出展し、雑誌に取り上げられるなど知名度が向上したことで卸先は全国に広がった。当時のナチュラル系のブームも追い風となり、女性ファンが急増した。

 だが、安易な拡大路線はとらず、人気絶頂の時に東京での展示会をやめ、地元での開催に切り替えた。展示会場は同時期に開業した飲食併設の直営店。自分たちの物作りをぶらさず、ブランドの世界を表現するために最適な場所を選んだ。ブランドの濃さを保ちながら長く続けるための決断だった。

 今は地方でも工場併設のショップを開設しファクトリーブランドを販売する企業も増えてきた。東北のニット工場などでは自社ブランドだけでなく、地元の雑貨店や飲食店、古着店、伝統工芸やアート作家などに声をかけ、地域の魅力を伝え、遠方から来ても楽しんでもらえるイベントの開催も目立つ。

 少なくなったとはいえ、地方には物作りが根付いている地域がまだまだある。そこで商品が生み出された歴史や文化、風土などに触れ、作り手の思いまで感じられれば、服への愛着はさらに増すことだろう。この秋は旅行気分で工場併設のショップやイベントに出かけてみてはいかがだろうか。



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