「世界中のお客様に良い商品を提供しようとしている多くの企業に対して政治的な選択を迫るような風潮には強い疑問を感じている」。決算会見でのファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の発言だ。
H&Mが新疆綿を使わないと公表し、中国で不買運動が起こった。4月の上期決算会見では新疆綿を使い、中国に出店しているファストリに、人権問題に対するスタンスを問うメディアが押し寄せた。
その後も仏司法当局が新疆ウイグル自治区での人権侵害の疑いでファストリの捜査を始めたとか、新疆綿を使ったユニクロ製品が米税関で輸入差し止めになったとニュースになった。
そうした報道が相次いだことを受け、柳井会長は今回、踏み込んだ発言をすると決めたようだ。「人権侵害を絶対に容認しない方針」のもと、これまで取り組んできた人権問題を見逃さないための仕組み作りから、より高いレベルのトレーサビリティー(履歴管理)を目指すため、今後どんな手を打つかまで丁寧に説明した。
話を聞いた他のメディアがそれをどう受け止めたかは知らない。個人的には、企業が対立する大国のどちらの肩を持とうが、興味もない。ただ「企業も個人も国もあらゆる手段を尽くし、全ての国が共存できる世界を作らなければならない」という柳井会長の言葉にはその通りだなと思った。