サステイナブル(持続可能性)やエシカル(倫理的)という言葉が業界にあふれる前から地域の社会問題に取り組んできた企業がある。神戸市で20年以上にわたり「ハイカラブルバード」などのセレクトショップを運営するメリケンヘッドクォーターズだ。
地元の兵庫県内で増えすぎた野生ニホンジカによる農林業被害が切実な社会問題となるなか、やむを得ず捕獲される個体を貴重な地域自然資源として、肉・皮・角まで「ニホンジカまるごと1頭有効活用」の仕組みを実現してきた。ファッション分野だけでなく、ジビエとして鹿肉を提供する飲食店も経営している。
今秋からは新たに、これまで廃棄され未利用部位の鹿骨の利活用を開始した。肉・皮・角と同様、骨を自社回収・管理・加工し、その骨灰と県内の土を釉薬(ゆうやく)にして、県内陶芸家によって作られた食器の販売までスタートした。今秋にはオリジナルブランドによるウェアや革製品、食器を軸としたショップを阪急うめだ本店に出店した。
コロナ禍で苦境に立たされる百貨店では大手アパレルのブランド撤退による空床問題が深刻化している。今こそ、地道に社会貢献を続け、信頼を積み重ねて常連客に愛されてきた地方の個店やブランドがもっと正当に評価されるべきだろう。新たなステージに挑戦するチャンスは広がっている。