「街作りにおいて大切なのは『オープン』『楽しい』『集う場所』の三つ」。野本弘文東急代表取締役会長が、そう語っていた。「街作り」を掲げる企業が広がっている。総合ディベロッパーだけでなく、商業ディベロッパーや百貨店も街作りを今後の開発コンセプトとして打ち出し始めた。
かつて、百貨店や大型商業施設開発の重点は1カ所で買い物が完結するワンストップショッピング機能だった。それが発展してホテルやオフィス、クリニックなどの機能を付加した複合型商業施設の開発が続いた。近年は広場や公園、休憩室などのコミュニティースペースやイベントスペースを充実する傾向にある。
必要な買い物だけならECで代用できる。ちょっとしたコミュニケーションならSNSで十分かもしれない。便利ではあるが、それだけでは日々の生活は味気ない。居心地の良い空間や楽しく集う場の創出は、リアルならではの価値提供として重要性が増している。
さらには地域共生・地域共創の実践も欠かせない。「囲い込んでは駄目」(野本会長)なのだ。いくら施設内の魅力を高めても、一つの施設だけで永続的に集客力を維持することは難しい。周辺にある様々な施設や人とのつながりを広げていくこと。ハードとソフトの両面で「オープン」であること。それが街作りだと思う。