気に入った服ばかりヘビーローテーションで着てしまう。擦れたり破れたりしても目立たなければ気にしない。結果、直しながら10年以上着続けている服も少なくない。愛着がわき、捨てるのがもったいなくなるのだ。気軽にフリマアプリで売ることができない。
先日取材したお直しのサルトでは、「少し前までは、流行遅れになったゆったりサイズのスーツを当時人気だったタイトフィットに変更してほしいなどのサイズに対する要望が多かった。今は親が昔着ていた服を抵抗なく着る若い世代が増えたため、バブル時代の良品を持ち込む人が目立つなど思い出の服をよみがえらせる傾向がある」という。90年代ファッションなどオーバーサイズの流れが再び強まっていることも追い風のようだ。
市場にモノがあふれている反動から若い世代を中心に、語れる一点物に価値を見いだすようになってきた。古着ブームがそれを証明している。古着をリメイクし、アップサイクルすることで新たな価値を生み出す事業も増加中だ。捨てられるはずだった服が人から人へ循環するのはサステイナブル(持続可能)なことだろう。
10年後、20年後、大人になった息子に自分の服を着てもらうのが、ひそかな楽しみ。そういう時のためにも、高度なお直しを提供できる企業がもっと注目されてほしい。