東京・蒲田(大田区)はかつて有数の「映画の街」だった。36年まで松竹キネマの撮影所があり、50年代後半~60年代前半には20以上の映画館があった。JR蒲田駅では29年に発表された歌謡曲で、82年に公開された同名映画の主題歌「蒲田行進曲」のメロディーが発車時に流れる。
しかし、時代は変わり、街から映画館がなくなった。9月に69年の歴史に幕を閉じた、最後の映画館「テアトル蒲田」は8月に閉館した「蒲田宝塚」とともに、86年公開の映画「キネマの天地」の舞台となり、古くからの地元住民にとって「街のシンボル」だった。
こうしたなか、「映画の街・蒲田」を発信する動きが地元で広がっている。大田観光協会は映画イベント「蒲田映画祭」を毎年実施、7回目の今年は、女優の倍賞千恵子さんのトークショーを開き、盛り上げた。東急プラザ蒲田は昨秋の開業50周年イベントで、蒲田を舞台にしたオリジナル映画を屋上やテアトル蒲田で無料上映し、好評だった。この成果を踏まえ、今年8~9月に屋上で次世代監督の短編映画計27作品を無料上映した。
来年は松竹キネマ撮影所の開設から100周年。隣接するグランデュオ蒲田、観光協会とも連携し、今後も映画の街としての発信を続ける。街のブランディングを強化する上で、商業施設が果たすべき役割は大きい。