20年春夏デザイナーコレクションはいよいよ終盤、パリへと舞台を移した。ニューヨークでトム・フォードが「安らぎ」や「くつろぎ」「シンプリシティー」というキーワードを示してから、ロンドン、ミラノでも、その傾向が続いている。
ミラノでは「プラダ」がシンプルなコレクションを見せた。「純粋さ」「本質」「複雑性からの脱却」といったキーワードを背景に、リネンのガーゼドレスなどのミニマルなラインを揃えた。装飾を重ねたスタイルでこの間、ビジネスも成長させてきた「グッチ」でさえも、春夏は控えめな装飾を感じさせる。
〝インスタ映え〟が消費のキーワードになって以来、ハイファッションにもその影響は強く及んでいた。その結果、わかりやすいブランドロゴやキャッチーで派手な装飾のデザインが市場を席巻してきた。必然的にシンプルでミニマルなカットはなかなか日の目を見なかった。それが来春夏は大転換しようとしているのかもしれない。
装飾が行き過ぎると、いつしか揺れ戻しが起こる。それが無いものねだりのファッションのサイクルだ。80年代の喧騒(けんそう)から一転して、90年代初めにヘルムート・ラングらのミニマリズムが起こったのもそうした流れ。今回のシンプリシティーへの回帰は本物か。パリ・コレクションの状況を見守りたい。